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第六十一話 ページ12

「本当にありがとう、助かった」
「ううん、平気」
「時間取らせちゃって悪いな」
「全然大丈夫だよ」

そんな何気ない会話をしながら二人で資料室を出る。
既に授業が始まってから何十分も経っている。
今教室に戻ったら気まずいだろうな、と思いながら会長と並んで歩いた。

「……にしても邦月さんがそんなに探し物得意だとはね。 また頼もうか」
「それ以前に掃除してよ」

冗談を言いあい笑っていると、前方に人影が見えた。
顔を上げれば、もう見知ってしまった人物が資料集を片手に廊下のど真ん中につったっていた。
しかも何故かわからないけど呆然とした顔で私達を見ている。

私と会長は共に顔を見合わせて、首をかしげた。
そしてすぐに視線を戻し、尋ねる。

「笹塚先生、どうかしましたか?」
「っ……あ、いや……」

私の声にハッとなった先生は、我に返ったようにぱちくりと瞬きをする。
そしてすぐに眉間のシワを深めて私達を見る。

……なんだろう、先生の機嫌が悪い気がする。

「……邦月。 模範生徒である委員長が堂々とサボリとは感心しねぇな」
「……え、あ……」
「待ってください笹塚先生。 彼女は俺が呼びました」
「……あぁそうか。 会長が一生徒をサボらせるたぁ、生徒会はいつからそんなに偉くなったんだ?」

無意識に固唾を呑む。
いつもの先生とは雰囲気がまるで違って、別人のようだった。
怒らせると怖い人というのは、彼のことを言うのだろうか……?

「仰るとおりです。 この件については僕が責任を取ります。 処罰は笹塚先生が下してください」
「……ちっ……手間かけさせやがって」
「ちょ、ま、待ってください!そんなの、」
「いいから」

私の言葉を会長が遮る。
そして彼は私の顔を覗き込んできた。
よっぽど私が物言いたげな顔をしていたのだろう、彼は苦笑を浮かべてから私の瞳を真っ直ぐ見つめる。

「俺のことはいいから。 邦月さんは教室に戻ってな。 悪いな、巻き込んじゃって」
「っ……」

最後に私は先生の方を一瞥する。
だけどいつもの暖かい眼差しはそこになくて、彼はただ冷たい瞳で私を見下ろしてくるだけだった。
いつも弧を描いていた口元も、今は固く結ばれている。
まるで全然知らない他人のように思えて、私は思わず身を震わせてしまった。

「……失礼します」

消え入りそうな声だった。
私はそれだけを告げて、早足でその場を過ぎ去った。
まるで唐突に夢から現実へと連れ戻さた感覚がして、私は思わず唇を噛む。

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年11月14日 20時

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