343 ページ3
〜A〜
忍田｢A！シャワー行くぞ！」
また戻ってきた
それも怒って
動かない私を抱きかかえて白い部屋から連れ出した
忍田｢私はここで待ってるから。1人で洗えるだろ？」
あの人が出ていくと、ここも別の部屋なのだと認識した
私はここで何をすればいいのだろう
鏡に映った自分の姿
その後ろに黒いモヤモヤした影がピッタリくっついてる
コレが私を殺してくれるのだろうか
〜忍田〜
忍田｢A？入っていいか？」
1時間ほど経ってドアを開ける前に声をかけた
返事がない
そうだった。Aは喋れないんだ
あの絞り出した声は弱く細く 今にも消えてしまいそうなものだった
中に入ると鏡を見つめたまま動かないA
まさか1時間ずっとそうしていたのか！！？
忍田｢A？まず服を脱ごう。な？」
脱ぐのは手伝ったが、さすがに肌着はハードルが高い
せめて沢村くんにもAのことを話して協力を要したい
忍田｢私が出ていったらこれも脱いでシャワーを浴びるんだぞ。いいな？」
数秒間 虚ろな目と見つめ合って、コクリと小さく頷いた
大丈夫……だよな？
シャワーなんてどこの家庭にもあるものだし
本当は側についていたいが、子供とはいえ女の子
動いたところを久しぶりに見た
最近では蓮矢の撮った写真でしか見なかったからな
あんな目も…………するようになるぐらい深く傷ついた
『しにょだ？』
うまいこと呂律が回らずそう呼ばれたこともあった
わずか5分でやめられたが
『まーくん』
あの時はさすがに蓮矢も碧さんも焦っていた
2人してなんとか｢忍田｣と
思い出の中ならあの子はこんなにも笑っているのに
力がなければ守れない
大切な人も 大切にしたいと思える人も
同じことを繰り返してはいけない
もっと……今以上に強くならなければ
Aが泣かないですむように
Aの全てを守れるように
忍田｢……？」
気のせいだろうか。シャワーの音が強い
嫌な予感しかない
立場とか最低限のルールとか無視して中に入ると、湯気で何も見えなくなるぐらいの
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まゆ
| 作成日時：2019年2月7日 15時
