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頃は神無月、子の刻。
草木も眠る、とはまさにこのことだ。耳が痛いほどの静けさに包まれている。
山の奥、茂みの中で月光に金属が反射した。
とたん。
夜の静寂に刃物がぶつかる音が響いた。間もなく、音がやむ。
正確に狙われた心臓は、逃げるのが一瞬遅かったがために貫かれた。
決着がついたようだ。一人のくノ一が声もなく倒れた。彼女は、Aの母親、そしてタソガレドキ忍軍の精鋭の一人だった。
勝者は去っていく。ウシミツドキ忍軍だった。
しばらく後、くノ一の亡骸に音もなく一人の忍者が近寄る。そして亡骸を抱き上げ、顔をうずめて涙をこぼした。
くノ一の夫、そしてAの父親だった。
しかし彼も忍びだ、いつまでもそうしてはいない。
遅れて合流した昆奈門や山本陣内と共に、妻を葬って去った。
ここにいつまでも留まるわけにはいかないのだ。今は戦の最中。それも、忍者同士のだ。
昼間に大々的にやるのとは違い、静かに、命が消えていく。
まだうなだれているAの父親を、昆奈門は必死に励ました。
「惜しい人を亡くしたよ才能もにも、才覚にも恵まれたくノ一だった。しかし、お前は今、それを気にしている場合ではない。ここで死んでは怒られるだろう?」
「はっ、失礼いたしました。」
そして持ち場に戻っていく。
しかし、ここで一人で行かせたのが間違いだったのだ。平常心ではない状態で戦いに臨んだため、Aの父親はあっけなく殺されてしまった。
山本陣内が駆けつけた時にはすでに、事切れていた。
「くっ、精鋭が、二人も...!」
昆奈門は静かに、退却命令を出す。
本陣に戻り、黄昏甚兵衛に戦況を報告した。すると何やら昆奈門に耳打ちし、伝令に行かせた。
一方山本陣内は仲間に戦況を伝えに行く。
彼の帰りを知り、二人の忍びが野営所から走り出てきた。
「小頭!無事だったんですね!」
「尊奈門、騒ぐな。...当たり前だ。戦況を報告する。精鋭が二人戦死、負傷者数名、いずれも重症ではない。」
二人戦死。しかも精鋭が。
四人しかいない精鋭で、山本陣内、雑渡昆奈門が生きているなら死んだのは...。
十六歳の高坂陣内左衛門、十一歳諸泉尊奈門は愕然とした。
自分たちが妹のようにかわいがっている、Aの両親が、戦死。
自分たちも二人にまるで家族のように接してもらっていた。
その、二人が...。
三人はしばらく、うつむいていた。
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めりかもち(プロフ) - ネコさん» ごめんなさい、非公開にしてたんです、修正箇所があったもので・・・ (2017年3月14日 14時) (レス) id: b21596c2f0 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ(プロフ) - 13話はないんですか? (2017年3月13日 18時) (レス) id: e74d9a9bc5 (このIDを非表示/違反報告)
めりかもち(プロフ) - yukiさん» わざわざありがとうございます! (2017年3月13日 13時) (レス) id: b21596c2f0 (このIDを非表示/違反報告)
めりかもち(プロフ) - そうです、ありがとうございます! (2017年3月13日 13時) (レス) id: 62949f6d7f (このIDを非表示/違反報告)
yuki(プロフ) - イベントの開催者です!こちらの作品で合ってますか? (2017年3月12日 14時) (レス) id: af8dad474e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:めりかもち | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/merikamochi/ninntama
作成日時:2017年2月23日 18時