８３: 混乱 ページ33
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英「そこにいて…」
「いるよ、もうどこにも行かないから。少し話そう、英智」
微笑んで頷くと、英智は泣きそうな顔をする。
ゆっくりと近づいて来るのを正面から見据え、俺の向かい側のソファを隔てて立ち止まった。
英「兄さん……兄さんだよね、僕が８歳の時に居なくなった…天祥院 A兄さん」
「……うん、そうだよ。久し振りだね」
誰かの驚きの声を引き金に、一気に周りが騒ついた。当然のように頷いたが、英智はそれに顔を顰める。
一歩踏み出して、まくし立てる様に尋ねてきた。
英「っ…聞きたいことが沢山あるんだよ。消えたってどういう事だったのか、どこに居たのか、何で僕から隠れてたのか。敬人に協力してもらってたの？」
「待って、一度に質問されても無理」
苦笑しながら遮ると、人より早く冷静になったらしい北斗が戸惑っている様に口を開いた。
北「ま、待て。あんたが…天祥院先輩の、兄だと？そう言ったか？」
「その通りだけど」
明「ぇええぇえぇぇーーっ！！？！」
「煩い」と笑うと北斗がスバルを宥め、説明を求めるとでも言いたげに視線を送ってくる。
それに応えようと口を開いたが、言おうと思っていた言葉は音にならずに詰まった。
英「ッずっと、探して…待ってたんだよ…っ」
「英智っ」
英「ッ……ぅ…」
ずっと堪えていたのだろう。自分は生徒会長で夢ノ咲のトップだから泣いてはダメだ、そう思って。
俺と同じ色の瞳から涙がこぼれたのを見て慌てて駆け寄った。
英智の額を肩に押しつける様に手を回すと、嗚咽する声が耳元で聞こえる。皆んなが呆気に取られて俺たちを見ていた。
「落ち着いたか？」
英「うん……皆んなごめんね、どうぞ食事を続けて」
北「続けられるわけあるか！いきなりとんでもない事を言われて気にならないわけないだろう。説明をっ…
月「A……それは、ほんと…？」
「レオ……」
レオがヨロヨロと立ち上がって、俺の服を掴む。何とも言えない複雑な表情で見上げられ、答えに詰まってしまう。
絞り出すように声を出した。
「本当、だよ」
月「ずっと黙って抱え込んでたのはそういうことか…」
泉「『王さま』っ…！」
半ば放心状態で崩れるようにソファへ座り込むレオを、泉が支える。
多くの人が思っただろう。
『なら何で去年、天祥院を止めなかったんだ』
どこか殺気立つような視線が混じっているのは、きっとそういう事だ。
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作者名：瑠璃烏 | 作成日時：2019年12月14日 3時
