戦え舞え舞え藤の花 (ページ42)

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「これはっ…」

「……A」

「は、はい」

「今騒がしいのは何処だ」

静かに問われ、目を閉じて耳を澄ます。

何処が騒がしい？強い鬼がいるのは何処だ…聞け聞け聞け…！

恐らく…という程度だが認識したので、目を開けて師範に伝える。

「あっち…東ですね。山の奥の方かと」

「ならば俺が其方へ行く。お前はこの近辺の鬼を狩れ」

「は、はいっ！」

「……また稽古を付ける」

青い瞳を見つめ返して力強く頷き、お互いがそれぞれの方向へ走り出した。

相変わらず遠回しな言い方だけど、あれはきっと「死ぬな」という意味。

大丈夫、私は死なない。

おじ様の面影が、厄除の面が、藤の首飾りが、元炎柱様の声が、私を助けてくれるから。

師範に言われ続けてきたことを思い出しながら、遭遇した鬼と向かい合う。

『全ての鬼を、自分の家族を殺した鬼だと思え。怒れ。でも我を忘れるな。相手の動きを見て、聞いて戦え。柱のように強い鬼だと思って頭を使え』

暗示のように、頭の中で声が響く。

許さない、許しちゃいけない。こいつは私の家族を奪った…殺した…！

襲い掛かってきた鬼の腕を切り落として、足の運びから次の動きを予測して躱し次の瞬間に首を落とす。

大丈夫。ちゃんと意識のあるまま出来てる。

ホッと息を吐いて、まだ周りにいる鬼を次々と狩っていく。

それがひと段落ついた時だった。

「！？か、雷…？」

落雷した音が鼓膜を震わせ、思わず肩が跳ねた。でも雷雲は無いようだし…

綺麗な月を見上げた時、はたと立ち止まって頭に彼の顔を浮かべる。

雷…？

「善逸…！？」

気付けば、その場を駆け出していた。

ーーー

「善逸！善逸、いるの！？善逸ーっ！」

何度も何度も呼んでいるのに。彼の耳になら届く筈なのに。なのに返事が無い…

私の耳が鈍っているだけ？それともまさか

その時、開けた場所に出た。その中央にある窪み。何かが空から降ってきて衝突したような…

不思議に思って近づいた途端、思わず悲鳴にならなかった声が漏れる。

「ひッ…」

「……ぁれ…Aちゃん…？」

「ぜ…んいつ…！」

そこには、血塗れで倒れる善逸がいた。