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あの後夜明けまでに山を降って来た少年はそのままパタリと眠ってしまい、私は禰豆子というらしいその子の寝顔を眺めながら静かに問い掛けた。



「おじ様、炭治郎に稽古をつけるの?」


「ああ。……自分もやりたい、とそう言いたいのか」


「おじ様が本気で駄目だと言うなら別にいいの。でも、もし許してくれるなら鬼殺隊に入りたい。……もう一度聞かせて。どうして駄目なの?」



胸元に揺れる藤の飾りを手で撫でながらさり気なく問う。おじ様は消えかかる火を焚き直しながら躊躇いがちに少しずつ訳を話してくれる。



「……Aは、儂の娘も同然だと前に言ったな」


「うん」


「娘を失うのは辛く悲しい…それはどんな親とて同じことだ。鬼殺隊に入隊すればいつ死ぬかも分からない…そんな場所に行かせるのはどうしても憚られる…」



火かき棒を握る手に力が込められるのが分かった。

それほど大切に育ててくれていたのだと思い知り、涙が出そうになって奥歯を噛み締めた。

それでも何とか口を開いて言葉を紡ぐ。



「……おじ様。大切に育ててくれてありがとう。本当に、おじ様が本気で止めるなら私はこのままでいいの。でも最後にあと一回だけ、お願いさせて」


「ああ。……言ってみなさい」



いつもと同じ言葉。優しく私の言葉を誘い出してくれる言葉。

しっかりと背筋を正して、ジッと天狗の面の奥を見つめて口を開いた。



「鬼殺隊に入りたいの。私も修行をさせて下さい」



長い長い沈黙。

……いいや、そんな気がしただけ。きっと一瞬だったのだろう。

私を抱き上げてくれた優しい腕が、私を抱きしめていた。ゆっくりと頭を撫でられ、返事を悟る。



「分かった。炭治郎と共に、修行を始めよう」


「ッ……うん…!」



ぎゅうっと抱きしめ返して胸元に顔を埋めると、溢れる涙が羽織りに染み込んでいく。

一体、何年待っただろうか。3歳で拾われて、錆兎と真菰と義勇さんが可愛がってくれて、錆兎と真菰の死を受け入れて…


ああ、丁度10年だ。通りで藤の木が立派になっている筈だ。


お母様、お姉様、見ていて。

憎い鬼を滅してみせる。強くなってみせるから。


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瑠璃烏(プロフ) - 澄葉流さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年2月27日 11時) (レス) id: c14d105dae (このIDを非表示/違反報告)
澄葉流(プロフ) - とても面白いです!更新頑張ってください! (2020年2月26日 22時) (レス) id: 73c9d55ae5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瑠璃烏 | 作成日時:2020年2月26日 16時

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