戦え舞え舞え藤の花 (ページ39)

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39 炎柱様ページ39

急な来客…しかも柱に怯えていたけれど、彼らは思っていたより優しい人達だった。

何でも、胡蝶さまから私の事を聞いて師範を冷やかしに来たんだとか。

強張っていた私の体は、ある1人を目に捉えた瞬間ふっと力が抜けた。

「っ炎柱様！」

「君が冨岡の継子となった剣士か！まさか少女だったとは！」

「私っ…昔、炎柱様に助けて頂いて生き延びたんですが……同じ見た目、な訳無いですよね…？」

私を助けて下さった炎柱様と、見た目は同じ。でも声は…違う。炎柱様もキョトンとしている。

首を傾げている私に、炎柱様は思いついたように言った。

「ああ、前に時透が言っていたのは君のことか！よもや、それは俺の父ではないだろうか？俺の父もかつて炎柱だったからな！」

「お父様も…！素晴らしいご家系なのですね。差し出がましいとは存じますが、今元炎柱様はどちらへ？」

「家だ！」

「きっと覚えていないでしょうが……私のような弱者を助けて下さった御礼を、どうかお伝え下さい」

「ああ！分かった！」

ああ…このお方も、元炎柱様にそっくりだ。見た目は勿論、眩しくて暖かくて強くて…

懐かしくて嬉しくて、目頭が熱くなる。

ようやく目の前に出来た炎柱様の明るい態度のお陰ですっかり気が楽になり、時透さまとの再会もあって、私のような階級の低い者が柱の方たちと楽しくお話できたのだった。

ーーー

「怒れ」

「はい？」

「怒れと言った。鬼を目の前にした時のように」

「え…えぇ…！？」

宇随さまが稽古をつけている所を見たいと仰ったので、私が拒否出来る筈もなく。

柱が勢揃いした中で何故稽古を見られなければならないのか疑問が浮かんで怒りにまで発展しそうな所をなんとか押し留め、師範と向かい合って立つ。

「鬼はお前に何をした」

「………母と姉を殺した。逃げる私を追いかけて髪を引きちぎって腕に傷を付けて、私の平和で幸せな暮らしを壊した…」

「怒れ。怒りを力に変えろ。俺を鬼だと思って斬り掛かって来い」

鬼……

鬼…

お母様とお姉様を殺した…

傷つけた…壊した…！

段々と、息が荒くなる。

許さない。絶対に許せない。よくも私の家族を…お母様を、お姉様を…！

そうして、いつものように意識が途切れそうになった時だった。

「俺を見ろ！」

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