戦え舞え舞え藤の花 (ページ40)

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40 稽古ページ40

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「俺を見ろ！」

「！」

「＂冨岡義勇が＂お前の家族を殺したと思え。

お前が意識を飛ばそうが、俺は鬼より冷静にお前を見て倒す。俺を倒す為に、耳を使え。呼吸を使え。『自分の意思で』怒りをぶつけろ」

「私の意思で…」

そうだ…私は何の為に継子になった？

___自分の意思で、刀を振るう為だ。鬼を斬る為だ。

『自分の意思で』

もう一度自分に言い聞かせて、ゆっくりと目を開く。

冨岡義勇が私の母を、姉を殺した…幸せを壊した…

許すな、許すな許すな。

絶対に許しちゃいけない。私があいつを殺さなければならないんだ。

「………許さない……！」

「…！」

よく聞け。相手の呼吸音を、足音を、手に力を込める音を。

息を吸い込む音が聞こえた。

瞬間、私は攻撃を往なす為に木刀の切っ先を下へ向けて受ける。ぶつかる音が響き渡り、今度はこちらから攻撃を仕掛けた。

その間にも頭に浮かんでいるのは、許さないという純粋な怒り。

母を返せ、姉を返せ、私の家を返せ

ギリ、と歯を食いしばった瞬間、普段の私からは想像も出来ないような力が出て師範の木刀とぶつかった。

「！」

ゴトン、と木刀が地面へ落ちる音。

師範の喉元へ突きつけられた木刀。その木刀を握っているのは紛れもなく私だ。

誰もが呆け、沈黙が流れる。

そんな沈黙を断ち切る様に、私が木刀を取り落とした音が響く。数歩下がり、思いっきり土下座した。

「申し訳ありませんでした！！」

「！？」

「すみませんもうしません許して！今のは絶対！私じゃ！無かったですから！！」

「何故今の状況で謝る」

「だって師範に刀を突き付けるなんて無礼千万もいいところでしょう！？すみませんでした！」

面と砂利が擦れて音を立てる。そんな私を目の前にオロオロしていた師範は、ようやく顔を上げろと指示をくれる。

そろりと顔を上げれば、困惑した様子の師範。

「謝るところでは無いだろう。いや俺も驚いたが…」

「あの、つまり今のは何を仰いたかったのでしょう…？」

そう問えば、師範は静かに私を見下ろして言った。

「目の前にいる鬼は全て、俺や柱だと思え。耳を使え。頭を使え。呼吸を使え。相手が何をしてくるのか、常に頭で考えて戦え」

あと…と師範が付け加える。

「『黙れ』『鬼ごときが』などと汚い言葉を口にするのはやめろ」

「へっ？あ、はい」

困った様子の師範を前に、身に覚えが無いながらも頷いた。