ケモノ阿吽のいる暮らし。2冊目

伊達は天敵。その2 ページ22

『茂庭君、やっほー』


にぱっ、と笑顔で手をひらひら振り返す茂庭君。

いつもなら平和な時間が始まるのだが、

今回は周りの空気がピシッと固まった。


「…トモダチ？」


『っ…(汗)』


「こんにちは。白鳥沢の人もここに来るんだね」


「どーもー、

ウチのAがお世話になってるそうで」


「そんなそんな。逆にこっちの愚痴を聞いたり

相談に乗ってくれたり、お世話になってるのは

こっちだよ」


片手でうなじを抑え、困ったように笑う茂庭君。


「(おいどうすんだよ、こいつ素でいい奴だぞ)」


「(俺に言われても知らねーよ！)」


…隼人と英太はいつまでそうしてんだ。

呆れていると、ポケットに入れていた電話が鳴った。


『あ、電話出てくる』


「いってらっしゃい」








『もしもし…ん、鎌先？』


「あぁ俺だ」


もっさんと会わなかったか？と聞いてくる鎌先。


『会った会った。ほんと英太と隼人がごめんって

鎌先からも伝えといてね。ほんとごめん』


「いいってことよ。んじゃな」


『はいはーい』ﾃﾛﾘﾝｯ


にしても何故彼はこうもドンピシャに行動を

当ててくるのだろう。盗聴器でも付けられたか？


『ただいまー』


みんなの元へ帰ると、

やはり暗い雰囲気が周りを包んでいた。


『たーだーいーまっ…！？』


輪に入ろうとすると、

茂庭君の後ろ姿が立ち塞がった。


「でも、俺にとってもすごく大切なので」


待ってなんの話してたの。

茂庭君の後ろ姿で全く話の内容と

今の状況が見えない。



これが伊達の鉄壁か。



「じゃあね。土日楽しみにしてるから」


『うん。ばいばい』


真面目な顔から一転、ふわりと笑った茂庭君は

私の頭を撫でた後、駆け足で帰ってった。


…






『同い年なんですけどー！？』


「ごめんごめーん！！」


いたずらな笑みを浮かべた茂庭君の姿は

もう小さくなっていた。


「A、」


『何？』


「やっぱり俺あいつ嫌いだわ」


『何があったの』


口を尖らせた英太は次の日もご機嫌斜めだった。







ーーーーー


「もっさん、どうだった？」


「い〜や〜もうほんっと怖かった。

でも言うことは全部言ってきたよ」


「よくやった！さすがだ！」


「足もガックガクだったよ…あー怖かった…」

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