32話 ページ32
「もうここまで来たからには単刀直入に言わせて貰うね。」
無一郎は少しだけ俯きがちになった。長い髪に隠れて顔が良く見えない。
Aはいつもより真面目なトーンで話し始めた無一郎を前に反射的に背筋を伸ばす。
「(え、何何。無一郎君の声がガチだ。え、え、もしかして死刑宣告?)」
流石炭治郎の片割れ。謎な思考回路をしていらっしゃる。
どこをどう捉えたのかは謎に包まれているが死刑宣告でもされるんじゃないかという結論に辿り着いた。いやなんで。
それとは対照的に無一郎は制服の裾をぎゅっと握り締めた。そしてばっと顔を上げてAの目をしっかりと見た。
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「…Aのことが、好きです。
だから、僕のことを、ちゃんと…一人の男として見て欲しい…」
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熟れた林檎と同じくらい真っ赤な顔をして無一郎はそう告げた。
心臓の鼓動が本人に聞こえるんじゃないかと冷や冷やしていたと、後に本人は語っている。
一方のAは目を点にしてぽかんとしていた。
流石鈍感長男の姉。こちらもこちらとてかなりの鈍感なようで、無一郎の言葉の綾を理解する為に普段は炭治郎をどう引き剥がすかでしか使わない脳味噌をフル回転させた。
しかし「好き」という言葉が理解できないほど馬鹿でもなく。
「……私のことを?好き?無一郎君が?」
クエスチョンマークを沢山浮かべて、Aは無一郎に確認するように問いただす。
「…そうだよ。好き、Aのことが。一人の女性として。」
このままでは「姉的な存在として」好きなんじゃないかとAに言われてしまうと悟った無一郎は先にフラグ回収を行う。
どうやらその言葉を発っそうと思っていたようで、Aは口を噤んだ。
フラグ回収、見事に成功。
「え、え、え……」
愛の告白自体、今までに何度も受けたことのあるA。
しかしまさかこんなに近しい人から受けるとは思っていなかったようで、無一郎からの突然の告白にただただ混乱していた。
「ねぇ…」
ショートしそうな頭を何とか落ち着かせようとするAの手を無一郎がぎゅっと握り締めた。
いつもなら何も気にしないであろうこの行為が今はとてつもなく恥ずかしく感じる。
「僕のことさ、ちゃんと、一人の男として見て。」
揺れる浅葱の瞳に、Aはただただ唖然とするばかりだった。
繋がれた手は確かに温もりを帯びていた。
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とく(プロフ) - すごくいいお話でした…。涙が出るほど(笑) (7月19日 12時) (レス) id: 72e740ca3a (このIDを非表示/違反報告)
えむえいか - 貴方様は、神ですか? (2022年5月20日 16時) (レス) @page5 id: 6c61bb4c69 (このIDを非表示/違反報告)
孤 - 神作……… (2022年5月9日 15時) (レス) @page44 id: af8576bbe7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぐひらめ - たまに………たまに原作を思い出すような描写があって……目から汗が……… (2021年12月5日 7時) (レス) @page50 id: f76242864c (このIDを非表示/違反報告)
夏鈴 - 炭治郎のシスコン具合がめっちゃ良かったです‼︎無一郎と有一郎がでて来るとか最高すぎます‼︎とっても良い作品ありがとうございますー! (2021年11月21日 22時) (レス) @page50 id: 378955c846 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年6月13日 19時