５.狗巻と色摩 ページ23
＊
「あのね、トゲ」
「こんぶ？」
柚季は食べかけのおにぎりを皿に置くと、こっちを見て不安そうな顔をした。
「さっきの....元気？って言ったのだけど、よく眠れてないのかなって」
....思った。そうたどたどしい日本語で、少し陰っている自分の目の下を指差して、柚季はまた俺の方を見た。
(.....いや、お前こそ)
柚季の目の下...つまり涙袋は、うっすらと言うには少し濃く皺が刻み込まれていた。要するには隈だ。彼女も睡眠不足なのだ。
そりゃそうか。彼女がここに来たのは3日前だ。アメリカから飛行機に乗って、こんな東京のどことも知れないど田舎に連れてこられて。慣れない生活で睡眠も十分に取れないだろう。
しかも、初日から授業に引っ越し作業に、加えてあの五条の相手だ。それじゃ、睡眠を摂っても摂っても足りない。
その瞬間、飲み込んだ水と一緒に、すっとわだかまりが消えた。喉につかえてた氷がいきなり溶けたような。
"アメリカから来ました"
"いろいろ教えてください。えっと……マキ、トゲ、……パンダ？"
"いきなり呼び捨てかよ"
ああ、そうか。彼女はずっと、ただ単純に仲良くなろうとしてくれていたんだ。ただ、きっと日本の距離感や文化が分からないだけで。
"マキ、この呪具すごくいいね。大事にされてる"
今まで「一級呪具、いい呪具だ」と言った人はいても、「大事にされていて、いい呪具だ」と言った人はいなかった。
(だから、真希は.....)
気づいてしまえば簡単で、もう後には戻れない。
だってほら、真希に向けた彼女の言葉はこんなにも真っ直ぐで温かかった。
「トゲー、大丈夫？少し寝る？」
それに、自分の隈より出会って3日の他人の隈を気にするなんて、なんて真っ直ぐに優しいんだろう。
「......
熱くなる顔を隠すように、俺はスマホをポケットから取り出して"アメリカのどこから来たの？"と打った。
柚季に、歩み寄ろうと思った。
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鹿毛(プロフ) - 林檎さん» 林檎さん、そう言って頂けて光栄です！別垢の方を中心に活動していたため、返信も投稿もかなり間があいてしまいました...。林檎さんパワーでまた投稿頑張ります！棘くんは原作ではおふざけ要員みたいなところがあるので難しいですが、温かい目で見守ってください(^^) (2020年12月23日 14時) (
レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - めちゃくちゃ面白いです。とげくん視点のお話なんて見たことないし内容も面白かったです。続きお待ちしております。 (2020年11月17日 4時) (レス) id: 67c87e380d (このIDを非表示/違反報告)
鹿毛(プロフ) - 雨村@超高校級の絶望さん» 雨村＠超高校級の絶望さま、ありがとうございます！めっっちゃ嬉しいです！展開が遅い作品ですが、お付き合い頂けると嬉しいです(^^) (2020年9月25日 16時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
雨村@超高校級の絶望(プロフ) - わ、やば、めちゃくちゃ面白いです！！！応援してます！！更新頑張ってくださいれ！ (2020年9月25日 11時) (レス) id: d3cbdf2262 (このIDを非表示/違反報告)
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