5.狗巻と色摩 ページ21
*
「あ、トゲ。おはよう」
日が空のてっぺんを丁度過ぎる頃、食堂に足を踏み入れると先客がいた。
時計を見て納得。今は昼時だ。俺は朝ご飯を食べに来たけど。
「高菜」と返すと、柚季がトントンと自分の席の正面を指で鳴らした。こっちに座れ、という意味だろう。
つられてつい向かいの席に座ってから、まだ何も食べるものを用意していないことに気づいた。
すると、じっと目を見つめられるもんだから、なんだか席を立ちにくくなって、つい目を逸らす。……そして誤魔化しついでに冷蔵庫に水を取りに行く。
「元気?」
「?」
おはよう、の後にいきなり元気かと問われて違和感。
というより、確かに寝不足だが、君のことを考えすぎて寝不足だが、なんなら2時間も眠れていないが。……それを本人に言えるかと、そんなダサい葛藤が顔に出たのかもしれない。
手持ち無沙汰に飲みもしないミネラルウォーターのキャップを開け閉めしていると、柚季は、あ、と何かに気づいたように眉をしかめて何やらぶつぶつと呟き始めた。
多分、ハウジュドゥアイセイ、とかなんとか。
(英語、か)
あいにく英語は得意じゃない。
それは一般教養を勉強するといってもたかが知れている高専生であることと、おそらく自分が“呪言師”であることに起因する。
発声練習が制限されるため、耳が育たないのだ。
(ハウ、……)
やめよう。
口にしたことのない言葉は、どうやって言えば正解なのか想像もつかない。
186人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鹿毛(プロフ) - 林檎さん» 林檎さん、そう言って頂けて光栄です!別垢の方を中心に活動していたため、返信も投稿もかなり間があいてしまいました...。林檎さんパワーでまた投稿頑張ります!棘くんは原作ではおふざけ要員みたいなところがあるので難しいですが、温かい目で見守ってください(^^) (2020年12月23日 14時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - めちゃくちゃ面白いです。とげくん視点のお話なんて見たことないし内容も面白かったです。続きお待ちしております。 (2020年11月17日 4時) (レス) id: 67c87e380d (このIDを非表示/違反報告)
鹿毛(プロフ) - 雨村@超高校級の絶望さん» 雨村@超高校級の絶望さま、ありがとうございます!めっっちゃ嬉しいです!展開が遅い作品ですが、お付き合い頂けると嬉しいです(^^) (2020年9月25日 16時) (レス) id: 2c64977e89 (このIDを非表示/違反報告)
雨村@超高校級の絶望(プロフ) - わ、やば、めちゃくちゃ面白いです!!!応援してます!!更新頑張ってくださいれ! (2020年9月25日 11時) (レス) id: d3cbdf2262 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ