五話 ページ15
『…如何して私なんですか?』
それはAの純粋な質問。
あんな所で自分の様な待遇の人は沢山いる。
なのに、如何して私なのか。
Aにはそれが分からない。
何故生きているのか、何故死ねないのか、自分は人間の屑だと思っている彼女のただ単純な質問。
その問に、森は応える。
「そんなの…私が欲しいからだよ。欲しくなると如何しても手に入れたくなる…私は結構貪欲でね。」
成程、単純で明解。
…だがAには分からない。
自分にそこまで執着される物があるのか。
そこまでの価値が自分に有るものなのか。
彼女には分からない。
『…そこまで私に執着する様な物は何もありません。価値だってそうです。』
「君の価値が有るか無いかは君が決めることじゃない。謙遜も大いに美徳だが、君の場合では違うようだね。」
そう。Aは謙遜して云っているのではない。心からそう思っての言葉。
この短い会話でそれを見抜いた森に多少驚きながら、Aは口を開いた。
『…その通りです。これは私自身が思っている事。私の様な愚鈍でどうしようもない人間には、勿体無い話です。
…どうか、他の人にあたってください。』
深々とお辞儀をしながらそう言うと、森は目を瞬かせた。
「うーん…そこまで言われちゃあ仕方ないねぇ…中也君、君、有給全然減ってないよね?暫く休みをあげるから、彼女を説得したまえ。説得出来るまでは休んでていいから。」
「え。」
『…否、あの…お断りした筈ですが…』
そうAが言うと、”首領”の纏っている空気が変わった。
「赤坂君、君は私の話をきいていなかったのかね?
私は、欲しいものは何としてでも欲しいものは手に入れるのさ。どんな手を使ってもね。」
この声が耳の中でよく響いた気がした。
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さち - 今一気読みしました!!中也さんに頭撫でて貰うシーンが凄くにやけちゃいました。更新頑張ってください!! (2019年9月25日 20時) (レス) id: 50e2c8124c (このIDを非表示/違反報告)
麗華三日月 - 良いですね!其れは安心しました!元気なのが一番ですもんね! (2019年5月30日 21時) (レス) id: b8888aeaec (このIDを非表示/違反報告)
たま猫715(プロフ) - 麗華三日月さん» ありがとうございます…!私、結構体は丈夫なんですよ〜。やっぱり健康第一ですかね(笑) (2019年5月30日 9時) (レス) id: 1d5aed1ffe (このIDを非表示/違反報告)
麗華三日月 - はい!暑いとやる気が出ないですが、たま猫715さんの作品を読むと元気が出ます!無理しすぎないで下さいね。楽しみにしてます! (2019年5月30日 7時) (レス) id: b8888aeaec (このIDを非表示/違反報告)
たま猫715(プロフ) - 麗華三日月(セイレーン)さん» お久しぶりです!最近暑くなってきましたね!これからも頑張って更新しますね! (2019年5月29日 22時) (レス) id: 1d5aed1ffe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たま猫715 | 作成日時:2019年4月19日 16時