検索窓
今日:4 hit、昨日:10 hit、合計:10,219 hit

六 強い子 ページ6

「……分かった。でもオロチさんと相談してからにするね」


「じゃあ夜のことはまた今度にしんしょう。わっちがとびっきりの手ほどきをしてあげんしょう」


老いらんさんは口元を着物の端で隠し、くすりと笑った。

その奥に隠された意味に気づかないままお菓子を食べながらうわさ話をしたりして過ごした。


「ぁ、そろそろ帰らないと……。今日はありがとうございました」


「俺もAを送っていくから」


部屋を出ると晴愛さんは私に手ほどきとは何か尋ねた。

2人して顔を見合わせて首を傾げた。


「……よく分かんないけど、俺も着いてくね」


「まだ決まってないけれど」


いろいろ話しているうちに家に着いてしまった。


「ままだ‼まま‼」


家の中からどたどたと走る音が聞こえ、扉が少し開くとその隙間から桜が出てきた。


「おかえりー‼」


桜はにこにこと笑いながら私に抱きついた。


「うちの子本当に可愛い……」


私は桜を抱き上げて家の中に入った。


「随分早かったな。もっとゆっくりしてくれて構わなかったのだが……」


オロチさんは立ち上がって台所の方へ消えてしまった。


「……まぁくんは?」


桜は部屋の隅を指差す。

信は膝を抱えてこちらをじっと見つめていた。

下駄を脱いで信の側へ寄ると消えそうな声でおかえり、と言った。


「ただいま。今日は何して遊んだの?」


「……お外で鬼ごっこした」


何か落ち込んでいるのか、顔を伏せてしまった。


「まま怪我した?」


「えっ、してないよ」


ふと信の膝に大きなばんそうこうが貼られているのに気づいた。


「今日外で遊ばせていた時に転んでしまった」


オロチさんは5人分の飲み物を持って台所から出てきた。


「じゅーす飲む」


桜は私から離れるとオロチさんの方へ行ってしまった。


「それは痛かったね」


「痛くないもん。転んだ時泣かなかった」


信は震えた声で言った。


「そっか。まぁくん強いんだね」


信は顔をあげると少し嬉しそうな顔をした。


「強いまぁくんにままからお願い。おかえりのぎゅーってして欲しいな」


両手を広げるとまぁくんはもそもそと動いて私にそっと抱きついた。

私は大事に大事に抱きしめ、背中をとんとんと叩いた。

嗚咽が聞こえないように、私は信にずっと話しかけた。

静かになった頃、信は顔をあげて皆の方を指さした。

七 不貞腐れ→←五 不満



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!完結編を投稿したので、よろしくお願いします!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 番外編もすごく素敵でした!!続編楽しみにしてます。頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: f5a4951e98 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - れるれる(現.本垢)さん» 初めまして!!そう言っていただけてとても嬉しいです!!新作も今書いているので、次回作も読んでくださると嬉しいです!! (2019年9月25日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れるれる(現.本垢)(プロフ) - 初めまして。この作品、すごく好きです。妖ウォを卒業しても剣城さんの作品だけはずっと見てるんです(笑)これからも更新頑張って下さい。 (2019年9月24日 21時) (レス) id: bb493c8f2f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» 期間が空いてしまったので勘違いさせてしまいました……!!ゆっくりでも完結までは投稿するので安心してください!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年9月23日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。