検索窓
今日:1 hit、昨日:7 hit、合計:10,230 hit

十二 変わらない場所 ページ12

当日の朝のこと。


「かばんの中にお着替えとお手紙入ってるからね。お手紙は寝る前に読むんだよ。困ったら晴愛さんに必ず相談すること。あとは……屋敷の方たちに迷惑をかけないこと。あとは……何かあったっけ」


隣に居たオロチさんに尋ねるとオロチさんは2人の頭を強く撫でた。


「……楽しんでこい。また明日の夕方に迎えにいく」


2人は頷いて晴愛さんと手を繋いで一緒に屋敷の方へ行ってしまった。

途中振り返った2人に大きく手を振り、姿が見えなくなるまで私たちはずっと見守り続けた。

ついに見えなくなってしまうと私たちは家の前のベンチに座った。


「今何してるかな……」


「まだ屋敷にすら着いて居ない」


これからどうしようかと話していると風に流され、桜の香りが香ってきた。


「……そう言えば今人間界はもう桜が咲いてる頃だ。久しく人間界に行ってみるか」


「──いいね。行こう」


私たちは立ち上がり、人間界へ続く道のある門へ向かった。

妖怪エレベーターに入り移動中、暗い中で私は少しだけオロチさんに寄った。

手が少しだけ触れると離れるのを繰り返し、指先が私の手の甲に触れるとその手は私の指をぎこちなく絡め取った。


「オロチさん……いいの?」


オロチさんは一瞬だけ横目で私の顔を盗み見た。


「……今日だけ特別だ」


「あ、ありがとう……。嬉しい……」


ぎゅっと握るとオロチさんは更に強く握り返してくれた。

妖怪エレベーターが開き、人間界に出ると暖かな陽射しが私たちをぽかぽかと温めた。


「街並み、変わっちゃった……」


私が知っている街とはだいぶ雰囲気が変わってしまった。


「よく見れば昔と変わらない場所もある」


オロチさんに手を引かれ、おおもり山を降りると住宅街の方へ歩き出した。


「──ぁ、いい匂い」


焼きたてのパンの香りが風に乗って微かに香ってきた。

昔から何度も嗅いだことのある香りだ。

十三 再会→←十一 デートのお誘い



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!完結編を投稿したので、よろしくお願いします!! (2019年10月20日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 番外編もすごく素敵でした!!続編楽しみにしてます。頑張ってください! (2019年10月14日 23時) (レス) id: f5a4951e98 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - れるれる(現.本垢)さん» 初めまして!!そう言っていただけてとても嬉しいです!!新作も今書いているので、次回作も読んでくださると嬉しいです!! (2019年9月25日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
れるれる(現.本垢)(プロフ) - 初めまして。この作品、すごく好きです。妖ウォを卒業しても剣城さんの作品だけはずっと見てるんです(笑)これからも更新頑張って下さい。 (2019年9月24日 21時) (レス) id: bb493c8f2f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - なつさん» 期間が空いてしまったので勘違いさせてしまいました……!!ゆっくりでも完結までは投稿するので安心してください!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年9月23日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。