さくらの営み 5【オロチ】 (ページ10)

今日:6 hit、昨日:15 hit、合計:26,325 hit

二百十脱走ページ10

起きてすぐ大きなあくびをして目を擦る。

随分と長く寝ていたような気がしていた。

時計を見ると案の定、次の日の真昼になっていた。

身なりを整え部屋を開けると、廊下のずっと向こうからオロチさんが来ているのが見えた。

「随分と長く寝ていたな」

「はい、おかげで元気になりました」

オロチさんはさっきまでエンマ大王さまと居たようで今日1日、自由にしていいそうだ。

今日の予定を聞かれ、私はない予定を必死に思い出した。

「……あっ、そうです。今日は休んでいます。昨日言ったようにいろいろ、考えたいので。オロチさんは？」

「今日は予定はないが……。指令がない限りは書斎か武道場に居るつもりだ。もし何かあればいつでも呼べ」

オロチさんは私が脱走する為の情報を引き出されたのにも気づかず、書斎に入っていった。

私はそれから10分程待機してオロチさんがしばらくそこから出ないであろうと思い、小さな巾着を持って部屋を出た。

書斎前は案外簡単に通り過ぎることができた。

外に近づくにつれ段々と足早になる。

夢中で走っていると背後から首根っこを掴まれた。

「どこへ行く」

その声の主はぬらりひょんさんだった。

オロチさんに見つからないことばかり考えていてその他のことをすっかり忘れていた。

「……エンマ大王さまから話は聞いている。内側内でなら1人での行動は許可するそうだ。だが日が暮れるまでには帰って来るように」

ぬらりひょんさんはそう言って私の背中を強く押し出した。

「……‼あの、オロチさんには秘密にして下さい」

「……無論」

私はぬらりひょんさんに深くお辞儀をして急いで屋敷を出た。

屋敷を出て見えた妖魔界に私は息をのんだ。

そこには沢山の妖怪が行き交い、妖魔界が生きていた。

本来の姿なのかも知れないが、それを見たことのない私は特別な変化に思えた。

その中に紛れるには少しだけ不安と恐怖が邪魔をしていた。

だけど今日は1人で頑張らないといけない。

私は深呼吸をして自分の頬を叩き、行き交う群れに紛れ込んだ。

どこかお店を見たいところだが肝心のお店の場所が分からない。