二百三十七 大事 ページ37
「……はぁ」
温かい湯に浸かり、つい息を吐く。
少し離れたところで湯船に浸かっていた滝雨さんは水面を何度もすくっては手から溢れる水を眺めていた。
「お風呂がこんなにも温かいのは初めてだよ。いつもはそこらへんの適当な水か夏の陽射しで温かくなった水だった」
滝雨さんはぎこちなく笑うと私の隣へ移動した。
「……俺のこと本当に怖くないの。俺が殺したのは姫自体に理由があった訳じゃない。殺したという事実は変わらないのにどうして信じようとするの」
「正直まだ怖いです。でも私を殺したのは黒魔であるあなただから、妖怪のあなたとは違います。信じることもまだ私は怖いです。だけど、生きている限り心のどこかでは信じたいと思っているのだと思います。怖いけどそのままではきっと何も変わらないから……」
滝雨さんは顔下半分まで浸かりぶくぶくと泡を吹いた。
「……その意志は元から持っていた訳じゃないよね」
「この意志は妖怪になってから。人として生き続けてはきっと私はずっと信じてみようとも思いませんでした。……オロチさんにはたくさんお世話になりました」
滝雨さんはふぅん、と言って私の顔をじっと見つめた。
「オロチって奴のこと、そんなに大事なんだ」
「大事……なのかも……」
なんとなく自分の耳たぶを引っ張ってみる。
溢れるものは何なのか考えてみたけれど、ただ体を熱くするばかりだった。
「そ、そろそろでましょう……」
28人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時