二百三十五 夜風 ページ35
「失礼します」
玉座の間に入るとエンマ大王さまは何か書類を書いていた。
すぐに書き終わるから待っているようにと言われ、私たちは静かに待った。
2〜3分程してエンマ大王さまは手を止めた。
「今日はご苦労だった。粗方はオロチから聞いただろう。滝雨はしばらくAの責任の元、うちで保護することになった」
エンマ大王さまは手元の紙に目を写した。
「さっき滝雨に敵の情報を聴取したんだが特に重要なことは知らないらしくてな。どうにも仲間内だからと言って互いの情報などの交換はしていないらしい。敵側の親玉のこともはっきりとした姿も分からないそうだ。しばらくして落ち着いたら滝雨も戦いに参加してくれるそうだが、今は待つしかないな……」
玉座の間を出て、私は1人で外の風を浴びたいとオロチさんと別れた。
玄関の扉を開けると冷たい夜風が吹き込んだ。
石階段の上に座り足を投げ出して、何かを考える訳でもなくただ空を見上げる。
ぼんやりとしていると、どたどたと荒々しい足音が屋敷の中から近づいてくる。
「貴様っっ‼」
ぬらりひょんさんが凄い剣幕で外に飛び出した。
片手には滝雨さんの首根っこを掴んでいた。
「そんな大したことじゃないのに……」
滝雨さんはうんざりした顔をしてため息をついた。
「ど、どうしたのですか……」
「どうしたもこいつ"女"ではないか‼何故言わない……‼」
私が黙り込んだので2人も黙り込んでしまった。
「隠してるつもりは無いんだけどそんなにも男に見えるかな。確かに背は高いし胸はないけど……」
ぬらりひょんさんは滝雨さんを私の前に放りだし、私に監視しろと怒って屋敷内に入っていった。
「すみません……。今、人間界では中性的な方もいますので判断能力は鈍いです」
「ふぅん……。まぁ、俺は産まれてから自分の性別なんてある意味がなかったからどちらに捉えられようが構わないんだけど」
私は立ち上がって滝雨さんの手をとった。
はだけた着物を隠せる程に直して屋敷の中に戻った。
「……とにかく男の方の前で脱ぐのはやめましょう」
「分かった。ねぇ、姫もお風呂入ろ」
滝雨は袖口をぎゅっと握ってきた。
「……いいですよ。その前に部屋に荷物取りに行きますから」
私と滝雨は部屋に向かい歩き出した。
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時