二百三十九 違う目線 ページ39
お風呂から出て晴愛さんを部屋まで送ると私はオロチさんが居る書斎に向かった。
だけどオロチさんの姿はなかった。
なんとなく外に居るような気がして私は玄関の方へ向かった。
扉を開くと空は真っ暗。
月の光も雲が薄っすらと隠してしまっていた。
「……どうした」
石階段の上に座っていたオロチさんがこちらに気づき立ち上がった。
「……オロチさんに用事です。少しだけいいですか」
頷いたのを確認し、私は扉を締めてオロチさんの近くに駆け寄った。
暗くてオロチさんの表情はしっかりと読めなかった。
「えっと、その……私、オロチさんにぜひ受け取って欲しいものがありまして……」
緊張して震える手で懐を弄り、ピアスの入った小さな袋を取り出した。
「ぁ……っ」
襟元に引っ掛けてしまい、袋は宙を舞う。
私は咄嗟に身を乗り出しそれを掴んだが、それと同時に石階段があることを忘れていて足を踏み外してしまった。
すると背後から片手をお腹に手を回され、もう片方は袋を掴んだ手を掴まれぎゅっと引き寄せられた。
「怪我はないか……」
耳元でそう囁かれると変な声が漏れてしまいそうになった。
必死に抑えるとオロチさんは体を離した。
「暗いから足元には気をつけろ」
「す、すみません……」
振り返ると視線は少し上を向く。
普段はオロチさんの方が背が小さいから見下ろすような形だが、今は私が階段を1段低い所に立っているから逆転している。
「あの、ですね……。ぜひ受け取って欲しいものがありまして……」
オロチさんは黙って頷いた。
「これ……受け取って貰えますか……?」
袋を差し出すとオロチさんはそれと私の顔を交互に見て受け取った。
丁寧にテープを剥がし、中を取り出した。
「私は見返りが欲しかった訳ではなかったんだが……」
「そ、そうじゃないです。私もオロチさんと同じで一方的に身につけて欲しいと思っただけで……。それで私、オロチさんにありがとうって言いたくて……。色々悩んで選んでも中々言い出せなくて……」
溢れるばかりの思いを連ねられるだけ連ねて終わりが見えない。
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時