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二百二十四 裏切り者 ページ24

暗闇の中で聞こえる声の主はオロチさんだった。


「……すまない。話をつけようとしたが聞き入っては貰えなかった」


「そう、ですか……。……私が起こしたことですので謝らないでください」


私はオロチさんの声のする方へ手と足を引きずりながら移動した。

頬に手が触れるとその手は髪を撫で、目隠しの布を解いた。

暗闇からやっと見えた金色の目は深く影を取り込んでいた。


「Aは大勢の前で敵である黒雨を助けようとした。それは他の妖怪にとっては裏切りの行為だ。……それは分かるな。今、Aには敵の回し者という容疑がかけられている。あと1時間程したら尋問を受ける為に黒雨と一緒にここを出ることになるだろう。Aはどうしたい。回し者として1人を助けるか、大勢を守る為に1人を犠牲にするか」


「その2つの選択肢に私の意志はありません。私の意志は妖魔界と人間界、人と妖怪を守ること。私は何も犠牲にはしない……」


オロチさんは頬を撫でるとほっとしたように微笑んだ。


「……だそうだ。私はどんな運命を辿ってもAの味方でいよう」


オロチさんは最後に私の頭を撫でると急いで出ていってしまった。

後ろの方で小さく鎖が動いた音がして振り返るとそこには黒雨がいた。

腕と足を鎖を繋がれ、腕の鎖はたゆむことなくまっすぐ壁に突き刺さっている。

目隠しとさるぐつわをされ、口の端からはよだれが垂れていた。


「……ねぇ、その体どうしたのですか」


黒雨の体にはこの前会ったときより傷の数が明らかに増えていた。

致命傷どころの話ではない。

全ての傷が黒く染まり液体を垂らす。

嗚咽のような声が微かに漏れている。

私は疲れた体で必死に近寄った。


「私、待っていましたよ。あなたのこと、許せるか悩みました。それでどうしても黒魔であるあなたは許せない。でもあなたの苦しみは良く分かりました。いや、良く分かっていました。あなたは私に良く似ています。あなたにとって私は復讐の相手なのかも知れない。だけどあなたは私を殺さなかった。私はそれを信じてみようと思います。だから、絶対大丈夫。私があなたを守ってあげます」

二百二十五 裁判→←二百二十三 冷たさと重み



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設定タグ:妖怪ウォッチ , オロチ , 剣城京菜   
作品ジャンル:アニメ
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剣城京菜(プロフ) - aruya100さん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年2月8日 9時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
aruya100(プロフ) - いつも見させていただいてます。更新頑張ってください!期待してます! (2019年2月4日 23時) (レス) id: b60ccdc28b (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - yukiさん» ありがとうございます!!頑張ります!! (2019年1月30日 19時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
yuki - 作品楽しませていただいてます。続き頑張って下さい! (2019年1月30日 8時) (レス) id: 01053ecf80 (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - 剣城京菜さん» 頑張ります...! (2019年1月23日 19時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2019年1月21日 21時

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