百六十七 咲かない花 ページ17
凄く息苦しかった。
お手洗いに行くのも毎度部屋をでなければなからない。
その度に部屋の前にいる猫きよさんと犬まろさんにどこに行くのかと尋ねられる。
オロチさんはまだか、まだかと待っていると部屋の扉を誰かがノックをした。
オロチさんかと思い、平然を装い扉を開ける。
そこにいたのはエンマ大王だった。
「部屋の中ばかりいると窮屈だろ。散歩がてらオロチの迎えに今から外でないか」
「……‼行きます」
私は慌てて廊下に出た。
「猫きよと犬まろ、ご苦労だった。もう戻っていいぞ」
「了解ですニャ」
エンマ大王さまのあとについて行き、外に出ると空は深い紫色をしていた。
人間界で言うところの夕焼けだ。
綺麗だけど、少し不気味。
ぼんやりと空を眺めながら歩みを進める。
以前通った鬼の門をくぐり、桜の木が生えている場所に出た。
「桜……咲いていません」
桜の木は花も葉も付けないまま、周りを囲むように立っていた。
「……おかしいな」
エンマ大王さまは木の幹に手をあてがい空を見上げた。
「妖力を与えないと駄目なのかもな。どっちにしろまず、制御しなければ大事になるかも知れない」
「大事……」
エンマ大王さまは木札と紐で囲った場所を覗き込んだ。
「……帰って来るのは明日の朝かも知れない」
「そんな遠いところにあるんですか」
エンマ大王さまは随分と考え込んでいたが、結局何も答えなかった。
「……まぁ、あと少し待ってみるか」
エンマ大王さまはその場にあぐらをかいて座った。
私はじっとしているのも部屋の中にいるのと変わらないので、桜の木の下を歩くことにした。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時