百六十五 お見送り ページ15
「待たせる訳にはいかない」
起き上がろうとしたが全く力が入らなかった。
するとオロチさんは私の手を握り、優しく引っ張った。
「……歩けるか」
嘘をついて首を横にふるとオロチさんは引っ張った方の手で私の指先をちょこんと握りしめてくれた。
そのまま部屋を出て、エンマ大王さまのいる部屋まで手はずっと握られたままだった。
玉座の間の前までつくと手はするりと抜けた。
「失礼します」
オロチさんは澄ました顔で扉を開けた。
「取り込み中に悪かったな。とりあえず座ってくれ」
私たちは玉座の前にある小さな椅子に腰をかけた。
「Aの力のことだ。わかっている通り、Aは妖怪になったばかりなのと力が普通の妖怪とは別格であることから制御が上手くできていない。時間が解決するとは思うが、この状況では遅すぎる。だからそれまで制御する為の対策をたてなければならない」
エンマ大王さまの横にいたぬらりひょんさんが持っていた巻物を手際よく紐解き、中身をこちらに見せた。
「目的の物は今、人間界にあるそうだ。その役目はオロチに全うしてもらう。オロチが人間界に行っている間、桜神は屋敷内で大人しくしているように」
玉座の間を出てオロチさんは外に続く方に歩き出した。
ついていこうとしたら一緒に出てきたぬらりひょんさんに腕を掴まれてしまった。
「外へ出ることは断じて許さん」
「その名前で呼ばないで下さい。あとお見送りくらいさせてください」
力が緩むと私は腕を引っこ抜きオロチさんの元へ駆け寄った。
外に出るとオロチさんはこちらを振り向いた。
「すぐ帰ってくる。わざわざ見送りなんてしなくても良かったんだが」
「私がしたいと思ったから、です……。迷惑でしたか」
オロチさんは首を横に振った。
「ついていくのは駄目、ですか……?」
するとオロチさんは少し間を起き、首を横に振った。
「やはり人間界に戻りたいか」
「未練が無いわけではありません……。名残り惜しいのは確かです」
オロチさんは考える素振りを見せて私の顔を覗き込んだ。
「帰ったら人間界の様子を話そう。もう少し落ち着いたら私がこっそり連れて行いってやろう。……だから大人しく待てるな」
「それ小さい子に言い聞かせるやつですよ。……無事に帰って来て下さいね」
そう言うとオロチさんは微笑むと背を向け、去っていった。
私は見えなくなるまでいつまでもオロチさんが見えていたはずの空を見つめていた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時