百十 妬みの痛み ページ10
そっとカーテンに近づく。
たった布切れ1枚向こうにいるのに、それに手をかけることができなかった。
私なんかが寄り添えるものなのだろうか。
でもオロチさんの見えるところに居たいという思いもあり不安との葛藤をする。
迷いながらカーテンに触れるとふわりとカーテンが広がる。
開いたカーテンの隙間から手が伸び私の腕を引っ張った。
布1枚越しは案外簡単に越えられてしまった。
「……遠慮をしていたのか」
「……少し」
オロチさんは何も言わず私の手を引く。
ベッドに眠る顔を見て私は息を飲み込んだ。
「オロチさん……?」
それはオロチさんと瓜二つの顔。
違うことをあげれば暗い金髪に金の竜のマフラー。
水色の着物。
「ヒカリオロチは私の中のわかれた2つのうちの1つだ。普段は暑苦しい程煩いやつだが、いざこうなってみると寂しいものだな……」
「もう、目を覚まさないのですか……?」
オロチさんは静かに首を横に振り、眠っているヒカリオロチさんの胸元をはいだ。
「……‼」
ヒカリオロチさんの胸から腹にかけて大きく真っ黒に張り裂けていた。
血は出ていないが黒い傷は深く、ブラックホールのようにその奥に無限の空間があるような気がした。
「痛い……ですか……?」
「傷自体の痛みはないようだ。だが──……」
するとベッドが微かに軋んだ音を出した。
「だレダ……」
淀んだ青色の瞳が写したのは私だった。
「ヒカリオロチ、私が分かるか」
オロチさんがヒカリオロチさんの顔を覗き込む。
「ユルさナイ……‼」
ヒカリオロチさんはオロチさんを押しのけ、私に掴みかかった。
倒れそうになった私はカーテンを掴む。
だけどカーテンはびりびりと破れ、私は矢を射抜かれた獣のようにどすんと倒れた。
「ヒカリオロチ‼」
ヒカリオロチさんは今にも食い殺しそうな目で私を睨みつける。
両手は私の首を強く掴む。
「ジャま……だ……オマえが……イなけレば……」
じたばたしても抜け出せそうにない。
息ができなくて苦しい。
「イたい……」
ヒカリオロチさんは急に自身の左胸を掴むともがき苦しみ始めた。
淀んだ青色の瞳がふっと闇に染まる。
それと同時にヒカリオロチさんが私の上に倒れ込んだ。
「どうして、ですか……?」
問いかけても返事はなかった。
「……気にかけるな。こいつは自身に負けたんだ」
オロチさんはヒカリオロチさんの肩を支えながらベッドに寝かせた。
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紅桜(プロフ) - 楽しみにしてます♪頑張ってください! (2018年12月11日 20時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 紅桜さん» ありがとうございます!今作は大変長編となっていますので、今後も楽しんでくれると嬉しいです(^^♪ (2018年12月11日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - まさかの展開で驚きました...!とてもおもしろかったです!続きがきになります(≧∇≦) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年10月14日 12時