百五十八 ページ8
夏休みに入ってからも、もやもやはなくなることはない。
昼下がりのこと、プール帰りに私は家に帰ることはなく宛もなく歩いていた。
おおもり山に真っ先に行ったのだけれどオロチは居なかった。
どこを探しても居ない。
でも見つけたとしてもなにを言えばいい……?
もしかしてもう私にオロチと顔を合わせる資格なんてないんじゃ……。
夕方になってようやく家に戻ると部屋に誰かがいる気配がした。
オロチとは少し違う。
「……誰?」
部屋の扉を開けた瞬間、風がびゅうっと入り込んでカーテンを翻した。
「……えんらえんら」
えんらえんらはいつものように穏やかに笑わなかった。
「……」
ふわりと私の前に移動すると無言で私の頬を引っ叩いた。
「……ばか」
冷たい声だった。
「……Aちゃんが今日、今までどう思って過ごしてきたかは分からないけれどこんなところにいるべきじゃないわ〜。苦しいのは、辛いのはオロチだって一緒よ〜……」
「だ、だって……」
ふっと顔を逸らすと今度は反対の頬を引っ叩かれた。
「本当は私、オロチからAちゃんのことを聞いていたのよ〜……随分と悩んでいたわ……。あまり首を突っ込んでいいわけではないけれど〜私は2人に"幸せ"になって欲しいのよ〜……。だから、余計なお節介だって無理矢理にでもするわ〜……」
えんらえんらは私の腕を引っ張ると窓から勢いよく飛び出した。
ふと気づいた時には私は前に連れて来られたときと同じ場所にいた。
「オロチはこの先にいるわ〜。……私のお節介はここまで。あとはAちゃん次第よ〜」
私はえんらえんらの指差した方向へ向かった。
少し歩くと洞窟が見えてきた。
「む……待ちくたびれたぞ」
その洞窟から土蜘蛛が現れた。
「オロチはこの中だ。……野暮なことは言わん。早く行ってやれ」
土蜘蛛はそう言って何処かへと行ってしまった。
私は数秒考え込んでその洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟はそんなに長くは続かなかった。
蝋燭の灯りを頼りに奥へ進むと行き止まりに当たった。
そこへこちらへ背を向け寝転んでいる姿が見えた。
紛れもない、オロチだった。
「……寝ているの」
その問いかけに答えることはなかった。
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剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» http://uranai.nosv.org/u.php/list/Take2241/ こちらのURLに飛んで貰えれば完結したものが全て入ってます!もしくは私の名前をタップかクリックして貰えれば見つかります! (2017年10月21日 23時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - どんな作品がありますか? 読んでみたいです! (2017年10月21日 23時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» 楽しんで頂けて良かったです!残念ながらこの作品の続編を作る予定はありませんが現在投稿中の作品も過去作品もありますので良かったらそちらも読んで頂けると嬉しいです(^^) (2017年10月21日 18時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - 面白かったです!続編見たいです (2017年10月21日 18時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - capeさん» ありがとうございます!今後も頑張りますっっ (2017年8月28日 17時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年8月2日 1時