祓うべきもの壱【オロチ】 (ページ9)

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「……まぁいい。その目が呪われ死ぬと言うなら私からしたら無意味な話だ。既に死んだ身、これ以上どうにもならん」

彼はそう言って立ち上がった。

手を差し伸べられるも私はその手をとろうか迷った。

でもそれより先に彼は私の手を握って引っ張った。

それでその手は離すことはなく私は流されるままに連れて行かれた。

「殺さないの？」

「殺さん」

私は妖怪エレベーターと言うものに乗せられた。

これが人間界と妖怪の住む妖魔界と通じているらしい。

妖怪エレベーターに乗っている中は密室。

「……本当に殺さないの」

「殺さん。何度聞いても同じだぞ」

嘘だ嘘だ嘘だ。

きっと油断させて殺すつもりなんだ。

私はずっと彼を後ろから様子を探っていた。

妖怪エレベーターから出ると馴染みのある景色だった。

「……もう一人で帰れます」

未だに繋がれた手を振り払おうとするも彼はがっちりと掴んでとても離そうという気はないらしい。

「殺すなら手っ取り早く済まして欲しいんだけど」

「まだ言うか、私は家まで送ってやると言ったはずだが」

彼はおおもり山から降りる道へ向かった。

「……私と居ると巻き込まれるよ」

そう言っても彼は

「知らん」

としか言わなかった。

ふと足が止まる。

私は彼の背中に顔面ごとぶつかってしまった。

「家はどこだ」

「……一人で帰れる」

手をぶんぶんと振っても彼は離さなかった。

仕方なく指を指して道を示した。

「……ここ」

するとようやく彼は手を離してくれた。

何故だろう。

誰も私を襲いに来なかった。

……たまたまだろうか。

「……本当にここなのか」

「……そうだよ」

疑っているのか彼はじろじろと見ていた。

「あ、Aちゃん」

家の中から公彦おじさんがスーツを着て出てきた。

「会社に戻るよう言われちゃって、悪いけど留守番しててくれる？」

私は頷いた。

「本当ごめんね、早めに帰るから」

公彦おじさんは私の頭をぽんと手を置くと急いで走っていってしまった。

「……嘘ではないです」

「悪かったな」

少しの間沈黙が続く。

「A……と言ったか。名字はなんという」

「……どうでもいい、もう殺さなくていいから」

私は家に入ると鍵を閉めた。

そして覗き穴から様子を伺った。

彼は数秒こちらを見ていたが諦めたのか飛んで何処かへ行ってしまった。