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三十六 ページ36

「無駄に広い家だな」


家の前でオロチが言った。


「早く入って」


オロチが家の中に入ると私は玄関を閉め、鍵をかけた。


「Aちゃん、鍵は?」


「……これ」


私は公彦おじさんに家全ての鍵を渡した。

全てと言っても部屋の1つ1つに鍵があるわけじゃない。

和式の家なので裏口と玄関の鍵くらいだった。

こっそりくすねたごつい鍵を除いてはそのくらい。

くすねたのを見ていたのかオロチは鍵を入れたポケットをじっと見ていた。

久しぶりに自分の部屋に行くと中は遊んだまま床に落ちている積み木や人形、紙風船などが転がっていた。

障子は黄ばんでるし穴にシールが貼ったままだ。


「我ながら汚い。ねぇ、バケツに水汲んできて。近くに湧き水あるはずだから」


オロチにバケツを渡すと部屋から追い出した。

これでしばらくは戻ってこないだろう。

その間私は床に散らかったおもちゃを1箇所に集めた。

全部が全部懐かしい。

1つ1つのおもちゃにいっぱい思い出がある。

おもちゃなんて滅多に買えないから記憶もしっかりしている。


「……おい」


「ぇ、な、なに……」


完全に不意打ちで心臓が飛び出そうになった。

差し出されたバケツには水がいっぱい入っていた。


「行き道に大きな蔵を見たのだがあれもAのものか」


「……そうだよ」


バケツの水で雑巾を濡らすとおもちゃについたホコリを拭き取った。


「鍵かかってるけど……あそこには絶対に入らないでね。……絶対だよ」


蔵には入るなとオロチを戒めた。

なにか言いたそうだったがもう一枚雑巾を渡して部屋の掃除を手伝わせた。

部屋が終わればお風呂場、お手洗い、とりあえず必要な部屋だけ掃除をした。

既に日が暮れ、オレンジ色に染まっていた。

外に出ても空が見えるのは少しだけ。

木が邪魔をしているのだ。


「随分裕福だったんだな」


「ねぇ……裕福ってなに?確かに土地は大きいけどただそれだけだよ。沢山お金を持ってる訳じゃない……普通の家庭と変わらなかったのに……」


夕日に背を向け、私は家の中へ入った。

夕食を食べ、お風呂に入った頃にはもうくたくただった。

布団は畳に直接引くやつで、少しかび臭い。

明日干さないと病気になりそうだ。

懐かしい部屋で一人きりの睡眠。

オロチはというと隣の部屋で寝るようにしてもらった。

何となく寂しい気はするけど多分気のせいだ。

化け物になってしまうのならこんな気持ちも無くなっちゃえば良かったのに。

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設定タグ:妖怪ウォッチ , オロチ , 剣城京菜   
作品ジャンル:アニメ
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剣城京菜(プロフ) - 浅葱さん» ありがとうございます頑張ります(^^) (2017年5月1日 9時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - 不器用な感じが良いです更新頑張って下さい (2017年4月30日 23時) (レス) id: c9c24569e0 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - シオン!!さん» ありがとうございます頑張ります!! (2017年4月10日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
シオン!! - 頑張ってくださいね! (2017年4月9日 2時) (レス) id: 4af10f54a6 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - *gami*さん» ありがとうございます!!頑張ります(^^) (2017年4月6日 0時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年4月4日 19時

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