7 ページ42
・
陵side
朝から海真が寝込んでいるという話を聞いて、ひろと2人、その部屋のドアを叩いたのがさっき。
ドアを開けた俺たちは中の様子に驚いて、きっと酷く間の抜けた顔をしていたと思う。
「……あ、陵、ひろ」
ベッドに座っていた蓮が、俺らに気付いて小さく声をあげる。
俺はそんな蓮よりも彼の腕の中で寝息をたてている海真の方に目がいって、それは隣にいるひろも同じだったらしい。
「…は？なんで？」
困惑した声をあげるひろに、蓮は苦笑。
眠っている海真の髪をひとなでし、それから優しく目を細めた。
「寝るかって聞いたらこのままがいいって言われちゃって。海真のワガママなんて断れるわけないだろ？」
「……断れるわけないわけがねーけど、確かに海真がそんなこと言うの珍しいな」
冷静にそうツッコミつつ、ひろがベッドの方へ寄っていく。
…素直じゃないひろのことだ。本当は今も海真のことが心配でたまらないはず。
俺もひろの後ろに続き、それから汗ばんだ海真の額に右手を当ててみた。
決して低くない温度がじわりと伝わってきて、なるほどこれは辛いはずだ。
すると冷たい温度に驚かせてしまったのか、んん、と海真が呻き声を上げる。
怠そうに開けられた瞳にはあふれんばかりの涙が溜まっていて、彼が瞬きを1つするだけで簡単にこぼれ落ちた。
「…さむ、」
「マジ？」
ぼんやりと、少し掠れた声で呟く海真。
驚いた声をあげる蓮に今は俺も賛成。まだ熱上がるのかよ。
「…ねえ」
蓮の腕の中で、海真が俺を見上げた。
潤んだ瞳が多少上目遣いにこちらを見てきて、……ちょっとだけ可愛いとか思ったのは内緒だ。
「なーに海真」
優しい声を出すと、ひろが「うわきも」とか言ってくるのが聞こえた。
彼の足を軽く蹴飛ばしつつ、目は海真に向けたまま。
海真は少し躊躇うように視線をさまよわせて、それからまた上目遣いで俺を見つめる。
「……撫でて」
──ああこれは確かに、蓮の言った通りだ。
断れるわけがない。こんなにまっすぐ甘えてくる海真なんて、初めて見た。
「…しょーがねえなー」
俺よりも先に手を伸ばしたのはひろ。わしゃりと乱雑に海真の髪を撫で、珍しく優しい瞳を向けている。
俺もすぐに海真の頭に手を伸ばした。ひろとは違って、なるべく優しく撫でる。
海真は恥ずかしそうに、でもやっぱり嬉しそうにはにかんでて……たまにはこうやって甘えられるのも悪くない、なんてな。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 212人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます！ おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜！ (2021年2月13日 9時) (
レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます！まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています！ (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません！こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます！ (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます！頑張りますね！ (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁☆ | 作成日時：2018年6月15日 20時
