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陵side


目を開けたらなぜか蓮が、泣き出しそうな顔でうつむいていて。

しんどさよりも安心させてあげないと、という気持ちが先走って、おれは思わず蓮の頭を撫で回していた。


「何で撫でられてるんだおれ…」


心底不満げな声で呟く蓮。

急に泣き出した彼に焦っていたのもあって、そのいつも通りのかんじに少し安心した。


「…べつに、なんでもいいだろ」


安心すると、体の怠さの方に意識が行ってしまう。

熱はたぶん、上がっているだろう。過呼吸起こしたし、吐いたし…。


「っせいふく、」


ガバ、と勢い良く蓮から離れる。

ぐらりと視界が揺れて体がふらついたのを、蓮の左手が支えてくれた。


「急に動くなよ、陵熱相当あるぞ?」


「これは、やばいよな」


蓮の心配は無視して、今自分の着ているカッターシャツを引っ張る。

正直今すぐ着替えたいくらいには汚れている。もうこれ一生着れないだろ。ゴミ箱行きだ。


「てかれん、ついてない?さっきめっちゃくっついちゃったんだけど」


俺の制服はまあ我慢するとして、問題は蓮。さすがに人様に迷惑はかけたくない。

…そう思って蓮の方を見るものの、彼は怒った顔で俺を見てきていた。


「…なに」


怒ってる蓮なんて、珍しい。

居心地の悪さから少し苦い声が出て、これじゃ怖がってるみたいじゃん。そんなんじゃないのに。


「制服より陵のが大事だよ、おれ」


怒った顔の蓮が発するのは、拗ねたような声。

一瞬何を言われたのか理解出来なくて固まっていると、蓮は容赦なく俺の体を引き寄せた。

抵抗する力も気力もなかった俺は、あっさり蓮の方へもたれかかる。


「ちょ、よごれる」


「しんどいんだろ?……それから、さっきからずっと震えてる」


蓮の言葉に、どきりと心臓が跳ねた。…気付かれて。


「狭いとこ無理って、さっき言ってたよな。閉所恐怖症?」


ぽんぽんと、あやすように背中を撫でられる。

資料室の扉は今は一応開いているけど、こっちはさっきまで閉じ込められていた身だ。

…本当は少しだけ、怖かった。

でも、何となく恥ずかしくて言えなくて。


「…ばーか、そんなわけないだろ」


蓮の胸に、顔を埋める。

それだけで恐怖とかしんどさとか忘れられる気がして、俺はそっと息をついた。

優しく、頭を撫でられる。


とろとろとやってきた心地良い眠気に、俺はそっと意識を手放した。





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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時

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