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海真side


ふわふわとした意識のまま車に乗せられて、そこから先はあんまり覚えてない。

気付いたときは病院で、病院の先生が何か言ってるのを聞いて、それからまた車に乗せられて。

何度か寝て起きてを繰り返した頃、急に気持ち悪くなって俺は、誰かの服の裾を握った。


「どした?」


いつもより抑えられたその声はたぶん、恵のもの。

気持ち悪いと言おうとして、でも声を出したらやばそうで、俺は黙って体を起こす。

助手席からわざわざ振り返ってくれていた陵が、ビニール袋を恵に渡した。
…陵は察しが良すぎる。

恵もビニール袋を渡されれば察したのか、黙って袋を俺の口元へ持って来てくれた。


「先生車止めて」


陵のそう言う声が聞こえる。

…あれ、先生もいたんだっけ。てゆーか陵は、いつから。

ずっとふわふわした意識だったからか、全然記憶にない。


「…っん、」


喉元までせり上がってきたものを、反射的に飲み込む。

恵が背中をさすってくれた。


「我慢しなくていいからな?」


一定のリズムで背中をさすられる感覚に、気持ち悪さは増してくる。


「…っゲホッゴホッ……っえ、ゴホッ」


耐えきれなくて吐いた物が、ビニール袋の中に落ちていく。

落ち着いてから顔を上げると、優しく陵に撫でられた。

いつの間にか車はコンビニの駐車場に止まっていて、先生がいなくなっている。


「石谷先生なら飲み物買って来るってさ」


すぐ戻って来ると思うから、そんな寂しそうな顔すんなよ、と陵が微笑んだ。

それを見た恵が、陵が優しくて気持ちわりぃ、と茶化すように笑う。
陵がすかさず恵の頭を小突いたけど。


そんな二人をぼんやりと見ていると、恵が心配そうに、もたれていいぞ、と言ってくれた。

別にしんどかったわけじゃないけど、せっかくの優しさを断るのも嫌で遠慮なく恵に体を預ける。


特別しんどいとかは無かったはずなのに、体は休息を求めているらしい。

すぐに眠気がやってきて目を閉じる。

そのままうとうとしていると、車のドアが開く音がした。


「ごめん海真くん。水分だけ取ろっか」


石谷先生の声に、うっすら目を開ける。

ぼーっとしている間に恵が、先生から受け取ったスポーツドリンクのふたを開けてくれた。

それを少しだけ飲んで、もう一度目を閉じる。

今度はまどろむ暇もないほどの眠気に、すぐに意識を手放した。




 

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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時

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