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恵side
湊からLINEをもらって部屋に入ったときにはもう、海真は目を赤くさせていて。
この時点で海真の涙腺がいつもより緩んでいることに気付いて、気をつけるべきだったのに。
後先考えず口に出してしまう性格に、心底嫌気が差す。
湊に背中を撫でられながら涙を流す海真を、オレは見ていることしかできなかった。
「熱いね。一回熱計ってみよっか」
湊の優しい声に、海真はゆるりとうなずく。
オレは共同リビングから持って来ていた体温計を湊に渡した。
湊が体温計を海真の脇にそっと入れる。
その冷たさにさえ涙をこぼす海真に、さっき強く言ってしまったことを酷く後悔した。
しばらくして、体温計の無機質な音が部屋に鳴り響く。
海真は完全に湊に体重を預け目も閉じていたため、オレがその体温計を抜いた。
「…わ、たっか。これやばくね?」
体温計に表示されているのは、39.1という数字。
湊に見せると、彼は心配そうに眉を下げた。
「やばいね」
湊は海真にもたれかかられていてキツそうな態勢にも関わらず、ふわりふわりと一定のリズムで彼の背中を撫で続ける。
オレもそれに習って彼の細い髪を撫でていると、控えめなノック音がして扉が開いた。
「石谷先生!」
湊がほっと安堵の笑みを浮かべる。
部屋に入って来た石谷先生が、海真の様子に顔を曇らせた。
「だいぶ高そうだね。恵君海真君のこと運べる?」
「おう。任せろ!」
元気良く答えると湊に、静かに、と苦笑される。
「湊君はどうする?一緒に行く?」
「あ…おれは、」
先生の質問に湊が答えようとしたとき、ちょうど扉が開いた。
入って来た陵が、先生と海真を見ては?と声を上げる。
「え、何、海真大丈夫?」
混乱しながらも海真を気遣う陵は、やっぱり本当は優しい。
陵の声に、目を閉じていた海真がようやく反応した。
ぼんやりとした瞳を陵に向ける海真。
「…ほんとに大丈夫?」
何も言わずにまばたきを繰り返す海真に、もう一度陵が聞く。
「…ん」
海真は頷き、それからまた目を閉じた。
石谷先生が早く行こ、とオレらを促す。
湊がこくりと頷いた。
「じゃあおれは待ってます。恵と陵でついて行ってあげて?」
「了解!」
湊の言葉に頷きオレは、海真の背中に触れる。
そのまま彼を横抱きにすると、先生がじゃあ行こうか、と部屋の扉を開けた。
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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時