運命のムラサキ. epic ページ32
*
ぼつぼつと、雨はまるで殻に篭ったナニカを剥ぎ出そうとするように私の傘を小突く。足元には小さな水たまり。その水たまりを覗き込むと、何食わぬ顔で私が私を見つめていた。
その瞳の中にも、私が写っていて、
その瞳の中にもまた、私が映っていて、
永遠と続くけど、視力の限界でそこまで見れないよ。
しゃがみこんで、水たまりに反射したアジサイを見つめる。鮮やかに発色して、青い葉の上にはたくさんの水をたくわえていた。
紫の花弁は淡く光って、
昔、手放してしまった風船の色と同じだった。
あのときは、おにいさんに取ってもらったんだっけ、
とても幼くて、コトバも覚えたてで、小学校に上がる前。
だけど、このアジサイのように、
そのおにいさんの顔は色濃く、私の脳に焼き残されていた。
とてもやさしくて、柔らかい笑みをむけてくれたな。
'' また会いたい。 ''
そう思う私は、葉の上で縮こまるカタツムリとさほど変わらないのだろう。そんな自分に嫌悪感が差して、流れるように水たまりをまた覗き込んだ。
そこにはムラサキの傘をさして、なんだか浮かない顔をしている私と、
真っ黒な傘をさした男の人も、疑問符をあたまに浮かべ、水たまりをのぞきこんでいた。
このひと、しってるよ。
まえに、私にふうせんをとどけてくれたひと。
——あぶないなおじょうちゃん！きをつけないとだぜ？
そうやさしい笑顔で、たいようのように、
おちこんでいたおさない私のために、
ムラサキのふうせんをとどけてくれたひと。
「………ぁ」
そう無意識に立ち上がって、男の人の方へ体を向けた。
「お、お嬢サン、なんで泣いてんだ？………失恋でもしちゃったのか？」
そうあのおにいさんは、前見せてくれた笑顔のときとは違い、
すこし儚げに微笑んでくれた。
その様子に目からなにかが溢れてくる。安堵した。
「うぉ、そんなに大失恋したのか！？と、とりあえず……俺ん家来るか？
あっ変な気持ちとかそういうのじゃないぞ、ただ、お嬢サンをどっかで見たことある気がしてな…」
そう誤解を解こうと、頰に掻くおにいさんに、ゆっくりと首を縦に動かした。
「よかった、……足先も濡れてるな、こんな雨の日にヒールなんて…、
……とりあえず、まずは家に来てくれ、それからだな！」
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ユズ - 知ってる歌の歌詞がタイトルになってる...!（嬉しい） (3月8日 9時) (
レス) id: ad7a46ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
世落さんず - いつも神作品をありがとうございます！！！更新応援しています！！( •̀ ω •́ ) (2月25日 22時) (レス) @page11 id: 0a59ca876b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いちごれもん | 作成日時：2024年2月11日 21時
