・ ページ13
*
急に重ねて、彼は目を丸くした。
あなたを、どこかおぼえてるようなきがする。とわたしが曖昧ながらも伝えると、
ぼろりと彼の瞳から雫が溢れる。
「あ、…へへ、そ、そうか…」
嬉しそうだけど、何処か儚くて、哀しそうな表情を浮かべる。
「……手、あったかいな…、生きてくれて、良かった…」
そうほろりとまた涙を流し続ける。
彼の綺麗な涙は、雫となり私の手の甲に
ぴしゃんと
こぼれおちる。
金色のオルゴールは優しく囁く。
''
忘れないで、あんしんして。
あなたのこと、忘れてなんかないよ。
''
そっとやさしく、音色でわたしと彼を包み込むように。
「へへ……、泣いてちゃ、、だめだよな」
そうもう片方の手の袖で少し乱暴に涙を拭く。
ないていいよ、急に口から言葉が溢れ出た。
きおくがないから、あなたとどんなことしたかよく分からないけど、
前のわたし、あなたにすごくたいせつにされてたって思うとすごくうれしい。
なかないでなんて言わないよ、すきにして。
「……ゔっ、はｯ、お、俺…ｯ、Aに全部忘れられるって思ｯて、最後の希望が…
俺の不注意でｯ、無くなったようにずっと思ってて…ｯ」
喉元に抑えていたであろう嗚咽が少し混じりながら、私の重ねた手に額を被せるように、顔を伏せて泣いた。
「けどｯ、そんなことなかった、Aはｯ記憶を無くしたけど、
それでも、Aは生きててｯ…、少しだけど俺のこと覚えてくれてて…」
そっと、優しく彼の頭に手をぽすん、と乗せる。
左右に振り、また戻っては振り、を繰り返して頭を撫でると、泣き声が少しずつ止んでくる。
まだ嗚咽混じった声で、彼は顔を上げていった。涙はどこにも見えない。
かわりに、すこし彼の目元が赤い。
「……なぁ俺、友人ｯって名乗ったけど、
ごめん、本当は友人なんかじゃなくて、彼氏だっｯたんだ、キミ‥の。」
彼は友人ではなく、前の私の彼氏だったそうだ。
そんな彼の頭から手を離し、彼に微笑んでこういった。
じゃあ、もういっかい。
……付き合っちゃう？
「…！うん、よ、よろしく…キミ…じゃなくて、
A。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユズ - 知ってる歌の歌詞がタイトルになってる...!（嬉しい） (3月8日 9時) (
レス) id: ad7a46ecd5 (このIDを非表示/違反報告)
世落さんず - いつも神作品をありがとうございます！！！更新応援しています！！( •̀ ω •́ ) (2月25日 22時) (レス) @page11 id: 0a59ca876b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちごれもん | 作成日時：2024年2月11日 21時
