２３． ページ23
「…あ。う。…え、っと。はい」
「ウン」
さっきのウェイターさんとはまったく違う、砕けた口調。
ひとつひとつにすこしの雑さが垣間見える、手つき。
ギザギザの歯を覗かせる、大きい口。
それから、空色の髪。
Aの心臓が全力疾走した後みたいにバクバクいっていた。
売店で思い立ってかった、ウツボの刺繍がされたキャップを目深に被り、フレームにタコのイラストが描かれた黒縁眼鏡を掛けなおした。
それから、選び間違えたかも…と苦い顔をした。
「…ありがとうございます」
「ン。…あ！お味はどうだった？これオレが味付けしたんだけど」
「え」
そういってウェイターさん、フロイド・リーチは、笑った。
「どお？」
「と、とっても、おいしかったです」
Aはぎこちない表情で、そう答えた。
マァ美味しかったのは本当である。絶品であったのだ。
それを聞いて、フロイドはニパ！と笑った。無邪気な笑顔だった。
「オネーサン、センスいいね」
「？どこがです」
「その帽子。ウツボ選ぶとかセンスあるわ」
「はあ…」
「オレね、ウツボの人魚なんだァ。知ってた？」
Aは「凄い」と、とにかく褒めて乾いた笑いを貼り付けた。
この帽子を買ったのは貴方が浮かんだからなのでとは言えない。
エヘエヘと上機嫌に長話をするフロイド。今の彼はとっても気分が良いらしかった。
「ねぇ、顔みせてよ。オネーサン。帽子邪魔」
「あ。待っ、」
影が差していた視界がパッ！と明るくなる。
「……、……小エビちゃん？」
「！お。お久しぶりです、フロイドさん」
そして。素っ頓狂な声が、懐かしいあだ名を呼んだのだ。
それが。Aはとっても嬉しくて、嬉しくて。
言葉を続けようとした。
した…のだけれど。
「オレを置いて、何処行ってた？」
低い声。地を這う、低い声がワナワナと鼓膜を震わせた。
スッと針みたく細くなった瞳。鈍く光るような黄色が、目の前。
小エビはゾッとした。背筋が凍てつくような心地がした。
そして本能的に、立ち上がる。
鞄からサッサッとお金を取り出して、フロイドに押し付ける。
「ごッ。ごちそうさまでした！！！」
「は？…あ。逃げんな小エビ！！ッ、A！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1597人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あさき(プロフ) - ハーツラビュル最高でした！！！私はマレウス様が推しです！！！！ (4月6日 20時) (
レス) @page31 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 自分も受験生です！！いつも素敵な小説をありがとうございます！同い年に驚きを隠せない文章力…頑張りましょうね！！ (3月28日 22時) (レス) @page30 id: 4e9994ed89 (このIDを非表示/違反報告)
troll_bb(プロフ) - 高校受験大変ですよね😣私も経験したのでめちゃくちゃわかります！更新いつでも待っています！受験頑張ってください！応援しています！ (3月26日 14時) (レス) @page30 id: f859515841 (このIDを非表示/違反報告)
るるか(プロフ) - 受験頑張ってください！いつまでもまちます！ (3月26日 12時) (レス) @page30 id: 2823c0bde0 (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - いつまでも待ちます！！！！！受験頑張ってください！！受かることを願ってます！！体調にも気をつけてください🙇♀️🙇♀️ (3月26日 10時) (レス) @page30 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：etc. | 作成日時：2023年7月28日 19時
