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「足を踏んづけても止めるべきだったわ」
溜息の中でヴィルは言った。
優雅に去っていったコスモスが瞼の裏に浮かんで、思わず眉根が寄る。
「やっぱりあの子…Aだったのね」
観客に紛れた彼女の、弾けるような笑顔を思い出した。
それはどこか見覚えがあったのだ。
大好きな子の、大好きな笑顔と重なって見えていたのだ。
「面影ありまくりじゃない…。馬鹿よアタシ。ほんと馬鹿」
眉をクシャクシャにして、ヴィルはアーモンドを口に放り込んだ。
吃驚するくらい綺麗な佇まいの女性がいたのだ。シャンと背筋が伸びていて、余計なものを削ぎ落としたみたいだった。
目を留めてしまうほどキラキラした宝石が転がっていたのだ。
けれどそれも当然だった。
他でもない、ヴィルが磨いたのだから。
「ハァ…。どうして声を掛けなかったのかしら。もうやだ」
言って、ボフン!とクッションに顔を埋めてしまったのだった。
彼はヴィル・シェーンハイト。世界的スーパーモデル。
素晴らしい賞を獲ったあの映画の主役。あの高級人気ブランドのモデル。
それから…一途に恋する27歳。
「連絡……を、回すのは嫌ね」
繊細な指でスマホの画面を突いていたヴィルは、画面を閉じた。
そしてそれを、鞄の奥に突っ込んだ。
グッと顔を上げた彼は悪い顔をして、笑った。
「アタシが一番に見つけて可愛がってやるわ」
グルグルと執着渦巻く瞳が、そこには在った。
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あさき(プロフ) - ハーツラビュル最高でした!!!私はマレウス様が推しです!!!! (4月6日 20時) (レス) @page31 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 自分も受験生です!!いつも素敵な小説をありがとうございます!同い年に驚きを隠せない文章力…頑張りましょうね!! (3月28日 22時) (レス) @page30 id: 4e9994ed89 (このIDを非表示/違反報告)
troll_bb(プロフ) - 高校受験大変ですよね😣私も経験したのでめちゃくちゃわかります!更新いつでも待っています!受験頑張ってください!応援しています! (3月26日 14時) (レス) @page30 id: f859515841 (このIDを非表示/違反報告)
るるか(プロフ) - 受験頑張ってください!いつまでもまちます! (3月26日 12時) (レス) @page30 id: 2823c0bde0 (このIDを非表示/違反報告)
あさき(プロフ) - いつまでも待ちます!!!!!受験頑張ってください!!受かることを願ってます!!体調にも気をつけてください🙇♀️🙇♀️ (3月26日 10時) (レス) @page30 id: 2e9509526a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:etc. | 作成日時:2023年7月28日 19時