黒外套の禍狗がある日突然異能を使えなくなったので。

痛い沈黙 ページ26

*



　長い沈黙が続いた。乱歩は平然とそこに立っているが、芥川が顔を真っ赤に染め、敦はわなわなと何かに耐えている。



「な…な…！」

「ん？」

「いくら乱歩さんでも許しません！」



　刹那、敦が芥川を守るように乱歩から遠ざけた。されるがままの芥川は表情ひとつ変えずにまだ真っ赤である。

　乱歩は拗ねたようで、「いいよ、別に異能の使えない理由教えてあげないから！」と吐き捨てて出ていってしまった。



　乱歩のいなくなった室内にまた痛い沈黙が続いた。



「………………人虎」

「ごめん」

「…もう少しで分かるというところだったというのに」

「怒ったところもまた可愛いよ」

「貴様本当に人虎か？正気か？」



　芥川が本格的に疑い始めたところで敦は己の発言を振り替える。いつもなら言わないような台詞を何も考えずに声に出した敦は全否定するがもう遅い。



　発言に引いて敦と口を聞こうとしない芥川とまた痛い沈黙が走った。




****



「乱歩さん、もう帰ってきたのですか」

「うん、まぁ…」



　探偵社に帰った乱歩がつまらなそうに椅子に腰かけた。机の上にはお菓子が山ほどあるが、それには手をつけず乱歩は言う。



「国木田。僕ちょっと社長のところ行ってくる」



　サボって寝てる太宰を横目に、国木田が了承したところで乱歩は早足で社長のもとへと行った。



「…福沢さん、入っていい？」

「あぁ。如何かしたのか？」

「僕としたことが引き下がって相手に勝ちを譲ったんだ」




　少し悔しそうに、乱歩は社長にすりよった。


*♪*


　これはCPじゃなくて公式だと言い張りたい作者です、乱歩さん可愛いです。

本音の裏返し→←異能の使えない理由

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す