sacrifice〜22 ページ26
「EVA7号機の起動テストは?」
「できるけど、何故?」
簡単だ。
私はここと向こう、双方の事情を少し知っているから。
私ならば、止められる可能性がほんの数パーセントだがあるかもしれない。
もとい、それはハリボテの言い訳に過ぎないけれど。
「大佐、あなたも知ってるでしょう。向こうでどんでもないことが起ころうとしてるって!」
「ええ、そうね、でも何故EVAに」
「私なら何か解決策を講じられるかもしれないと思ったからですよ。
言っちゃ悪いですけど、あの時、アダムスの器が碇シンジを拐って行ったあの時、そのトリガーを引いていれば!!……引いていれば。私はこんな我儘を言うこともなかった。」
声を大きくなんてしてしまって。
「プランは?」
「…構築済みです」
嘘だ。何も出来上がってなどいない。
「…死ぬわよ」
「ええ、いいですとも。これだけはなんとしても止めないと」
「…どうしてそこまで固執するの?」
聞かれたくないことを、聞かれてしまった。
言われたくないことを、言われてしまった。
「向こう」にいるあの人を愛しているだなんて、口が裂けても言えない。
「答えたくないので、答えません。」
パシンッ
乾いた音が響く。
そして時間をおいて、鈍い痛みが頬を走った。
「いい加減にしなさい」
そのとき感じたのは一瞬の諦め。
何も言い返せなかった。
「答えたくもないことに、あなたの命をかけないで。あなたは長く生きる義務がある。私のために、みんなのために。私はそう思うわ」
「…」
痛いほどの沈黙。
逃げ出したいほどに彼女の目線を受ける。
「…でもあなたが本気で命をかけたいというのなら私は止めない。好きにしなさい。」
ぶっきらぼうで、でも優しみを帯びた。
去り際、ミサトさんは言い残した。
「あなたの代わりはどこを探したっていないの。
あなたが誰を探してるのか、わたしにはわからない。
けどその人があなたにとってかけがえないように、わたしにとってはあなたがそうなのよ。A。
パイロットととしてじゃない、心からよ」
走馬灯のように昔の記憶が頭を駆け巡る。
屈託のない笑顔、それがミサトさんの持ち味だった。だがそれは過去の話。
目を覚ましてから、ミサトさんの笑顔を見たことはない。
きっとその笑顔をもう一度見ることはもうないのだろう。
笑顔を見るどころか、泣かせるかもわからない。
「…ありがとうございます。…ありがとうございます」
ふと。そう感じた。
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茉莉 - めっちゃ最高です!更新楽しみです!頑張ってください((๑•̀ㅂ•́)وガンハバレ~!!! (7月30日 19時) (レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 続きがテニスの王子様めっちゃ気になります! (6月22日 19時) (レス) id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
kaori - 読みました! (6月22日 19時) (レス) @page36 id: 1907f3ec8e (このIDを非表示/違反報告)
かずほ(プロフ) - 初めまして!昨日、シンエヴァ見に行って再び エヴァ 火付いてしまいましたw カヲルくんのとこ泣きました! こちらの夢小説シリーズ読ませて頂きました!更新楽しみにしてます! (2021年3月19日 19時) (レス) id: 4ea2670edc (このIDを非表示/違反報告)
RUKA(プロフ) - 長々とコメントを書いてしまい、ごめんなさい。続きがとても気になります。更新頑張ってください。 (2021年1月30日 9時) (レス) id: 4977de0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紅坂紅子 | 作成日時:2016年2月14日 1時