翠煙幻影《緑》〈2〉

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「Aは無事、智洋からの好意を受けることが出来た。せやから契約通り、母親の元に帰されたって訳。まぁ、それが彼女にとって幸せなんかは俺らには分からんし、関係もないけどな。」


「…脱出、した……」


「せやから…それも全部Aは結果を分かっててやった事や、言うてんねん。ちなみにこの実験内容は淳太も照史も知っとったで。アイツらも寄ってたかって智洋の事騙そうとするなんてさぁ……大人気ないよな。笑」


「ぼ、僕はっ、…」


「照史がAの事上手く逃がしたのも、嘘。そもそも逃げるも何も無い。今日、照史と2人で建物に戻って行ったAは、あの後照史と一緒に母親が待つ正面玄関に行っただけ。」


「そ、んな…」





マジックの種明かしをされたような


小説の続きをネタバレされたような。




今すぐにでも耳を塞ぎたくなる話。



いやや、信じたない。


そんな喪失感が一気に僕を

奈落の底へと突き堕とす。



今まで無意識に積み上げてきた何かが


大きな音を立て、崩れてく。





「残念やけどこれが全てや。智洋の脱出も、結局なんの意味も無かったってこと。」


「……はぁっ、………はぁ……」


「ひとつ言える事は、せやな…引き金を引いてくれてありがとうって事かな。」


「…ひき、がね……」


「なんやねん、さっきからオウム返しばっかりやなぁ…」





心臓が動く音がする。



今、Aは何処におるん？


何しとるん？



なぁ、…A……






なぁ…！！！





「嫌やぁ！！！」


「………」


「嫌っ！……嫌やって！！A！！！！」


「………」


「A…！A！！…嫌やって！！」


「………」


「嘘やって！！全部全部嘘やろっ！！！……A…！」





頭が痛い。





何もかもが



全てが


過去が


未来が





真っ黒の渦に巻き込まれ、


闇の中に溶け込んで行った。

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