｢助けて｣なんて虫が良すぎる。《青》〈1〉 (ページ44)

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「流星？」

「…………」

「起きられへん？」

「…………」

藤井は神山の声に反応する事はせず

ムクリと重そうに体を起こした。

神山は無視された事に少し心を痛めたが

彼が起きてくれたことに、安堵の表情を見せた。

「ご飯少し食べてから行こうか、準備するな？」

「………」

神山は彼を寝室に残し、1人台所に戻った。

そして軽く食べれる物を準備しテーブルに運んでいる時だった。

それはまるで、重い物を落とした時のよう。

そんな鈍く大きな、ドンッという音が寝室から聞こえてきた。

「…流星？…どうしたんやろ、」

生活の中でそんな音を聞くことはほぼないし

なんだか嫌な予感がしたので、

神山は持っていた皿をテーブルに置き

藤井がいるはずの寝室を覗いた。

「流星？……っ、ちょ、流星！おい！」

そこには先程までベッドに居たはずの藤井が

ベッド脇の硬い床の上でうつ伏せの状態のまま倒れていた。

声をかけても、揺すっても、

何をしても全く起きる気配がない。

神山は急いで救急車を呼び、メンバーとマネージャーに連絡を入れた。

仄暗い寝室に射し込む廊下の光は

彼らの行先を照らす道標になってくれるのか。

だとしたら、それはとても、頼りないであろう。

雑誌撮影は、行われた。

しかし、その現場に藤井の姿は無かった。

神山はあの後目を覚まさない藤井と共に救急車に乗り病院へ向かった。

少ししてから来たマネージャーは焦りながらも冷静を装っている。

そして、神山はその場で、

藤井がまだ目を覚まさない病室の中で、

藤井流星の活動休止の報告を受けた。

これは元々、次にまた倒れる事があれば休止をすると決定していたことらしく

藤井とも話し合いをしていたという。

人数が1人減ることが、どれだけ大きくて苦しい事か。

いつかきっと、元に戻る。

そう信じて待つしかない。

誰よりも苦しいのは藤井自身であるから、

藤井のためにも彼の前では苦しい顔を見せるべきではないだろう。

そう思った神山は、最初で最後と心に決め

撮影現場へと向かう車内で

1人青空から目を逸らし、静かに涙を流した。