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エミリーに渡されたカードの一番上には、Aのフルネームが印刷されていた。その下には、ナンバリングされた文章とそれらに対応するように粗雑に張り付けられた写真や新聞記事が揺れている。
よくよく読んでみれば、おそらくAのことについて書かれているのだと理解できた。
だが、これはAの何なのだろう。
もしや、彼女が見た夢の記憶だろうか。それとも願望……？いや、もしかすると荘園へ来る前の話か？
俺が首をひねれば、エミリーは見かねたように口を開いた。
「私は医師という立場上、少なからず貴方たちのことを知る必要があると思っているわ。もちろん、貴方たちの口から話してくれるに越したことは無いけれど……それでも、それが難しい人もいるでしょう？」
「……エミリー先生。俺は別に、それが勝利へつながるのなら問題ないと思っている。……もしかして、先生は俺たちの情報を悪用して利敵したり、戦力外の人間を貶めようとしているのか？」
言い訳を重ねる彼女に俺がそう言えば、エミリーは目を丸くして微笑んだ。
「ごめんなさい。そうだったわね」
「……続けてくれ」
「ナイチンゲールは荘園へ来たキッカケのヒントをくれるのよ。あくまでも、問題があるサバイバーに対して、サバイバー同士で中を深めて勝率を上げるための手立てとしてね。ナイチンゲールの口ぶりだとハンターのものもあるようだけれど、私には必要がないから見たことは無いわね」
俺はその話を聞きながら、カードへもう一度視線を落とした。
彼女の手記なのか、抽象的な書き方が多い。それだけでも謎なのに、加えて不気味さを醸し出していいるのは、クシャクシャに丸められたメモや切り抜かれた英字新聞だ。
「分からないな、これだけじゃ」
「……ええ。他の方々のうちでも難解なカードの一つね」
カードを丁寧にハンカチで包むと、俺はエミリーに微笑んだ。
「えーっと、とりあえずアリガトな。これ、活用できるだけ活用するわ」
エミリーも満足そうに頷いた。
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作者名：トバリ | 作成日時：2020年11月9日 22時
