ページ ページ11
.
それを思い出しながら歩いていると、Aが俺の名前を呼んだのが聞こえた。
振り返れば、イライの隣で気恥ずかしそうについてくるAの姿があった。
「……」
思わず、彼女を睨みそうになった。
「ナワーブ様、先ほど試合が終わったんです」
「見ていてくださいました？」とほほ笑む彼女に、俺は短く頷いた。
「ああ。チェイス、頑張ってたな。俺でも、あれだけの時間を稼ぐのは難しい」
「うふふ、そうでしょうか」
華が綻ぶように微笑んだ彼女に、心の奥が温かくなって溶けていくようだ。
近くで話を聞いていたイライも嬉しそうに口をはさんできた。
それが無性に腹立たい。
「そうだよ。今回の演繹はAさんだね」
「そうでしょうか、イライ様」
「向こうで観戦していたらしいロビー君も驚いていたよ。あんなにくるくると動かれたら、Aお姉ちゃんをあとに回さないとってね」
「……救助、あまり得意ではないんですよね」
Aとイライは楽しそうに会話をするものだ。
どんな彼女でも、俺はこんなに楽しそうに話す姿を見たことがない。
嗚呼、腹立たしい。
「俺、次は試合だから」
見ていられなくて、思わずそんな嘘を言った。
「ごめんなさい、引き留めてしまいましたね」
「そうだったのかい、ナワーブ」
不思議そうに記憶を手繰りだしたイライを見て、俺は心の中で舌打ちをした。
「カスタムだ。今日の対戦表に俺の名前はなかっただろう」
「チェイスの練習かい？」
「そんなとこ」
「頑張って」というAとイライの言葉を聞きながら、俺は歯を食いしばった。
.
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←前ページ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：トバリ | 作成日時：2020年11月9日 22時
