03,子ども ページ6
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手を伸ばしても空を掴むだけだった。
当たり前のことにため息を吐きたくなって、そんな自分に嫌気がさす。
こういう日は推しを見たって癒されないことを経験的に知っていた。
「勿体ないことをした」
そう呟きながら帰宅して、部屋に入る。
幸いなことにノートンはまだ部屋に戻っていない様だった。
今日は災難な一日だった。
少し考え事をしていたせいで教師に目をつけられ、職員室まで呼び出されてネチネチと嫌味を言われた。
それだけでもストレスだったのに、あまつさえ私のたった一つの得意なことにも口を出してくるから嫌になる。
私は別に自分の世界に閉じこもってなどいないのに。
はぁ……とため息を吐いて、部屋着に着替え終わる。
ごろりとベッドに横になると、自然と瞼が落ちてきた。
「……A……A」
誰かが私の名前を呼んでいる。
ひとしきり呼ぶと、困ったように吐かれるため息。
ついには私の頭をベシンと軽くたたいた。
「あ、あれ……？」
観念して瞳を開けると、すっごい顔が良い推しがいた。
なんだこれ、天使か。
困ったように眉を顰めるな、天使だろ。
「さっさと起きて。さっきから呼ばれてる」
「？……誰に、ですか」
「君の親」
ノートンにそう言われて、寝ぼけた頭で五感を集中させると、確かに母親の怒っている声が聞こえた。
「あ、ほんとだ」
そう言って顔を上げると、明らかに怒った表情をしているノートンは何も返してくれなかった。
気まずい。
……というか、ちょっと待て。
ここは私の部屋のはずなのに、どうして平然と部屋の中に入って来てるんだ。
確かに「部屋に入れる」とは言っていたけど……。
「早く行って」
考えごとをしていると温度を無くした声でそう言われ、私は慌てて部屋を出て階段を駆け下りた。
ノートンはAが出て行った方を見ながら、鏡の中へ戻った。
鏡から出れば、そこは何時もの自分の部屋。
「疲れてたみたい、あの子」
そう小さく呟いた。
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トバリ - ミルクケーキ@ﾄｼさん» ありがとうございます。更新、頑張らせていただきますね。 (2020年10月6日 18時) (
レス) id: 1296928d7f (このIDを非表示/違反報告)
ミルクケーキ@ﾄｼ(プロフ) - 好きです！更新頑張ってください！！ (2020年10月5日 18時) (レス) id: 4eab459e35 (このIDを非表示/違反報告)
トバリ - クルルさん» ありがとうございます！こちらだけでなく、短編まで！嬉しい限りです。 (2020年9月17日 22時) (レス) id: 12a0f93b04 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - 新作呼んできました！とっても面白くて・・・いつか短編集じゃなく中編として出してほしいくらい！更新頑張ってくださいね！ (2020年9月17日 21時) (レス) id: 5254ebaae5 (このIDを非表示/違反報告)
トバリ - クルルさん» 誤字報告、ありがとうございます。とても恥ずかしい間違いをしてしまいました……////。いつもご愛読、ありがとうございます。 (2020年9月13日 12時) (レス) id: 43b40f5855 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トバリ | 作成日時：2020年8月8日 19時
