20,臆病者 ページ44
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部屋の主がいないことを確認し、私は茶封筒を抱えなおした。
茶封筒の中身は、つい先日にかき上げたばかりの小説だ。ノートンやナワーブ、イライなどとの関わり合いの中で考えたことを元にし、気まぐれに学校をボイコットした少女が海辺で遊ぶ短編小説を書いた。海辺へ行ったり、休日ずっと電車に乗ったりしてみた。
そのことも含め、ノートンに話そうと思ったのだが……。無意識のうちにノートンがいないことを確認して、安心していた自分に気がついた。
もう数週間も前のことだというのに、ノートンの笑い声がフラッシュバックする。
きゅっと制服の胸元を握りしめた。
こっそり深呼吸を２、３度繰り返し、私はノートンの部屋のドアノブをひねった。
幸いなことにナワーブの部屋も、イライの部屋も……なんなら白黒無常の部屋も知っている。頭の中に描いた地図にメモっているだけだが、私が方向音痴でなければたどり着くことは出来るはずだ。
……でも、ナワーブの部屋が隣だと言われたから、そっちへ言ったほうが良いと思う。
「……いない」
廊下にも誰の姿が無いのを確認し、私はノートンの隣の部屋の扉をノックする。
返事はない。いないのだろうか。
「本当に注意すべきです。最近のキャンベル君の行動は目に余ります。……彼女もきっと傷つきますよ」
イライの声が聞こえてきた。体がこわばるのを感じる。急激に心拍が早くなり、呼吸の仕方を忘れてしまう。
私は震える手でガタガタとドアノブを回し、転がり込むようにナワーブの部屋へ入った。
閉まったドアに手を添え、私は息を吐く。ぺとりと耳をつけると、廊下での話し声が聞こえてくる。
聞きたくない。
ノートンが、イライが言う「彼女」について「知らない」と言ったら、「興味ない」と言ったら、「どうでもいい」と言ったら……。
今度こそ私は……どうなってしまうのだろう。それすらも見当がつかない。
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トバリ - ミルクケーキ@ﾄｼさん» ありがとうございます。更新、頑張らせていただきますね。 (2020年10月6日 18時) (
レス) id: 1296928d7f (このIDを非表示/違反報告)
ミルクケーキ@ﾄｼ(プロフ) - 好きです！更新頑張ってください！！ (2020年10月5日 18時) (レス) id: 4eab459e35 (このIDを非表示/違反報告)
トバリ - クルルさん» ありがとうございます！こちらだけでなく、短編まで！嬉しい限りです。 (2020年9月17日 22時) (レス) id: 12a0f93b04 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - 新作呼んできました！とっても面白くて・・・いつか短編集じゃなく中編として出してほしいくらい！更新頑張ってくださいね！ (2020年9月17日 21時) (レス) id: 5254ebaae5 (このIDを非表示/違反報告)
トバリ - クルルさん» 誤字報告、ありがとうございます。とても恥ずかしい間違いをしてしまいました……////。いつもご愛読、ありがとうございます。 (2020年9月13日 12時) (レス) id: 43b40f5855 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：トバリ | 作成日時：2020年8月8日 19時
