カボチャ頭をゆらして【grpn】 ページ2
(カボチャ頭をゆらして/ｇｒｐｐｎ)
–––"Trick or treat"
重いノックの音に導かれ木製の古びた扉を緊張気味に開けたら、そこにはカボチャを被った"彼"がいた。
彼との出会いは突然だった。なんの前触れもなしなある晩の、真夜中に来訪して来たのだ。
初めは本当に驚いた。目の前にはカボチャを被った変質者がいたからだ。ただ、その雰囲気はどこか人間離れしている感じがした。
カボチャに掘られている顔部分からチラリと覗かれた眼光は深海のように蒼く、燃え上がる炎のように紅かった……まるで"バケモノ"のようだった。
そして彼は口を開き、心臓にまで響いてくるような重く低い声で私に一言こう言い放った。
？？「トリックオアトリート」
その日を境に彼、改め"グルッペン"という男は毎晩私の家に訪問してくるようになった。私が作る甘味を求めて。
私の作るお菓子を彼はいたく気に入ったらしい。それが彼をこの家へ引き寄せる理由なんだろう。
私たちは気づけばそんな不思議な関係になっていた。
gr「ほぅ。今日は林檎パイか」
A「はい。珍しく沢山頂いたので」
gr「どれどれ、少し試食を…」バシッ！
A「ダメです」
gr「むっ……ケチな女はモテないんやぞ」
A「今日の林檎パイは一つだけで良いみたいですね」
gr「やっぱりケチじゃないか！」
***
ソレを一口食べると口内にしっとりとした甘味と少しの酸味が混ざり合った林檎とそのジューシーな果汁が染み込んだパイ生地の香ばしい上品な味が広がった。
gr「あ〜！美味いんじゃ〜〜」
心から幸せそうな声を出し彼は器用にカボチャの小さな隙間から口へと林檎パイを運んでいった。
A「ふふっ、それはよかった」
gr「何でこんなにも美味いんだ？？」
A「普通そんなに感動しますか？きっと林檎が新鮮だったからですよ。ん〜おいひ〜」
gr「いや、Aが作るから美味いんだゾ」
A「っ・・・！と、突然何言ってるんですか！」
gr「どうした？まるで林檎の様だな」
A「・・・からかわないで下さい」
gr「くくく、更に赤みが増したなぁ？」
彼がクスクスと笑う度に頭に被っているカボチャがゆらゆらと揺れた。
それが憎らしくも少しだけ可愛く見えた気がする。
A「今後一切グルさんには甘いものは作りません」
gr「あ！卑怯だゾ！！」
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作者名：トクノメイ | 作成日時：2018年5月4日 0時
