退院 ページ42
『ただいま〜』
「ただいま」
二週間ぶりの我が家に帰宅。
さっき報道陣に出産を報告したから、後は体力回復に務めるだけだ。
子供はまだNICUで入院で、後二週間は帰って来れない。
「久しぶりの我が家、どう？」
『やっぱ落ち着くわ』
剛典が荷物を片付けてくれてる。
私は申し訳無く思いながらも、ソファーでぐったりしてた。
『あーー、落ち着く』
「でも、退院が俺の休みと被ってよかったよ」
『それは私も思う、良かったわ』
明日まではゆっくりして、明後日からはトレーニングしたい。
洗濯機を回す音がすると、剛典がやって来た。
「ふふっ」
『何』
「Aが居てくれるだけで落ち着く」
その言葉を聞いて私は剛典に手を伸ばす。
ケアの施された髪に、ケアの施された顔。
『……やっぱ顔面偏差値高すぎる』
「急に？」
彼の肩に手を置いて起き上がると、彼は支えてくれた。
流れるように隣に座った彼に私は凭れて息を吐く。
『私も、あなたの隣が一番落ち着く』
「A……」
『有難いことに、沢山の人に知ってもらってるとさ、
向こうの病院でもあんまり落ち着かなかったんだよね』
ちょっと歩くと噂されたり、コソコソと、コソコソと、虫かよ。
正直、誰かが部屋の前を通るだけでビクついてた。
『安心できるのは、あなたの隣だけだから』
「嬉しいこと言ってくれるね」
産まれたばかりの子供が帰ってくるまで二人きり。
正直、早く会いたいし、お家で抱っこしてあげたい。
けど、子供が来たらこうやって甘えることも出来なくなる。
「A」
『ん？』
「俺は、あの子の父親でもあるけど、Aの旦那だから。
いつでも甘えていいからね」
『……うん』
私の考えてることを汲み取ってくれた彼。
まだ久しぶりのキスで、私は嬉しくなる。
愛されてると感じる。
『剛典、』
「ん？」
『愛してるよ』
「俺も愛してるよ」
まだ、私達は始まったばかり。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
