手紙 ページ11
Aへ、
誕生日おめでとう。それから、結婚おめでとう。
ちゃんと面と向かって言えなくてごめんね。
大きく元気に育ってくれて、ありがとう。
どうか、ご主人と幸せになってください。
私達は誰よりもあなたの味方で居てあげなければならない存在。
なのにか関わらず、私達はあなたと向き合うことすら出来ず、
いざ芸能界に足を踏み入れると聞いた時も、
家を出ていく選択をした時も、
ドラマに初めて出演が決まった時も、主演になった時も、
紅白歌合戦に出場した時も、
愛する人と出会えた時も、その人と結婚する時も、
あなたが辛かった時も、嬉しかった時も、
報告を受けても、私達は何も言ってあげることが出来なかった。
どうしてあなたばかり、と思うことがあった。
こんな最低な親を忘れて、どうか幸せに生きてください。
A、元気でね。
父、母、より
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Takanori.I
Aはその手紙を受けて、色んな感情を思い浮かべてた。
『ありがとうございます』
HIROさんもどうしてここで読ませたのか、って思ってた。
けど、俺にだけ教えてくれた。
特別席にご両親が来てることを。
『すみません、お時間を頂きました。
お恥ずかしいながら、両親と上手くいってなかったのは事実です。
ですが、私はここまで大きくなって、出会いにも恵まれて。
こうして素敵な主人に出会うこともできて、私は幸せです。
それは、両親がどんな形であれ、私を支えてくれたからです』
雰囲気が暗くならないように、前向きなコメントを残そうとする。
そんな彼女に胸が痛くなる。
本当は沢山思うところがあるはずなのに、Aは笑った。
そして、
『もっともっと、盛り上がっていけますか！！』
「「いぇーー！！」」
『もっともっと、笑っていけますか！！』
「「いぇーー！！」」
『それでは、最後の曲振りをね、TAKAHIROさんにお願いしたいと思います！』
Aはマイクをスタッフさんに返すと、俺を見て泣きそうに笑った。
俺も臣さんにマイクを返して、三代目の列に戻った。
敬浩「それでは、最後は、この曲で締めたいと思います！」
最後の楽曲が流れると、俺らはまたバラバラに散り始めて、
観客を盛り上げていく。
その時、Aは俺の手を取って、特別席に目を向けると、
『ありがとうございました』
俺らは揃って、そこに頭を下げた。
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作者名：雪乃 | 作成日時：2023年7月4日 0時
