チート夢主大戦争【オリジナル】

第23話：再三申し上げますが、びぃのえるでは御座いません（１） ページ24

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生活感の無い部屋に据えられた机が茜色に染め上げられても、未だに少年は開発に没頭していた。昼過ぎからここに陣どっていた彼――時雨雪或斗は、モスグリーンの虹彩に容赦なく突撃してきた光に思わず目を細め、そこでやっと我に返った。


或斗は手にしていた物体(発明品)を机上のA4規格の白いコピー用紙に乗せると、斜向かいの壁掛け時計を注視した。規則正しく揺れる振り子を閉じ込めたガラスの上では、短針と長針が本日二度目の180度を示そうとしている。


サイドに掛かっているカレンダーは、右端の青文字の直前まで×印が付けられている。これは、或斗が自宅に引き籠もる生活を選択して3年目から、彼の母親が毎朝刻むようになったものだ。IQと気位だけが高く、研究以外に無頓着な彼に、せめて曜日感覚だけでも身に付けて欲しいと願ってのことらしいのだが――健気なことこの上ありまへんなぁ奥さん、作者泣いちゃう!


いとも容易く涙腺が崩壊した作者を他所に、或斗は僅かに、しかし無意識に口角を引き上げながら、弾む足取りでお披露目会の準備に取り掛かっている。


現在時刻は17時57分――問題児・時雨雪或斗を説得するために、担任教師が家庭訪問に訪れる時刻の3分前だ。普段は頭脳と機材をいじる手しか動かさない彼が、部屋をかくも忙しなく動き回るのはこの時間帯のみだ。彼は毎日教師を自身の発明品で蹂躙しており、それこそが彼の唯一の楽しみである。従って、先程より或斗が上機嫌な理由はここにある。


そんな訳で、各所でしゃがみこんだり、背伸びしたりしながら何かを設置し、その動作確認をしていた或斗だが、階下から母親の余所行きの声を聞きつけると、急いで定位置に戻った。


――今日の新作は、奴がいつも通り部屋に侵入し、反応が無い俺に痺れを切らして向かいの席に座った途端、フローリングの下から滑走路が飛び出し、この3階建ての周りに張り巡らされたコースを時速150kmで走り回る大作だ!!名付けて、鼠々滑車(チ〇ーチ〇ートレイン)!泡を吹いて倒れる奴の滑稽な顔が今から目に浮かぶなぁ、あはははははははははは!!!!!


彼が気違い然とした笑いを噛み殺していると、いつも通り扉が開いた――のだが、いつもの苦笑の傍に想定外の道連れを確認し、或斗は思わずそちらを凝視した。



「久しぶりだね、或斗くん!」


鼓膜を揺らしたソプラノの持ち主は――

第24話：再三申し上げますが、びぃのえるでは御座いません（２）→←第22話：日常の崩壊〜ｓｉｄｅ西園寺〜

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