チート夢主大戦争【オリジナル】

第13話：出会って３秒で乞いに墜ちる（６） ページ14

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「……こ、このクソガキャあ”ぁ”……!」

バレエのピルエットの如き体勢で、地べたで悶絶する大男。その屈強な腕に抱かれる摩那が手にしていたのは、先程の狙撃音の発生源――小型の麻酔銃であった。するりと体を抜き取った摩那は、得意げに、しかし緊張を孕んだ表情で希乃に頷きかける。

――作戦開始よ!

黒く滑らかな相棒を懐に押し込みつつ、摩那は出口に向かって駆け出した。しかしこの行動に驚愕を禁じ得なかったのは、大男だけでは無かった。

「ふえぇぇっ!?」

先程の希乃の思考を参照して頂きたい。このちゃらんぽらん……いや、可愛らしい頭脳をお持ちの少女は、全くもって作戦など考え付いていなかった。ついでに言えば、無意味な説得を試みようとしていたのだから。従って、摩那が希乃と同じ作戦に至ったと考えたのは、ただの早とちりだった訳だ。状況を飲み込めない希乃は、摩那にとんちんかんな質問を投げかけた。

「どっ、どこ行くんですかぁっ!?」

「こっちよ!」

摩那は振り返りもせずに出口の所在を叫び返す。まさしく思考のすれ違い通信だ。この場合、得られる特典は何も無いが。

見る見る自分との距離を広げる背中を見つめ、どうしたものかと困惑顔の希乃であったが……やっと心を決めたらしく、踵を返そうとした。だがその時、

「ゔぉ”、お嬢チャン……た、助けてくれ」

瀕死のオットセイのうめき声が、彼女の歩を止めた。振り返った希乃の瞳には、脂汗を滲ませ、苦痛に顔を歪める男の姿がある。暫しの間哀れなやーさんを見つめていた希乃だが、何を思ったのかその場に跪き――あろうことか、大男を介抱しだしたのである。

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