*5話* ページ5
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5年前の夏休みの、初めの頃。
君とはまだ付き合っていない時だ。
「水谷、ここ 教えてくれないか?」
私が家で勉強をしていると、突然インターホンが鳴った。
私と君は、正直友達でもなんでも無かった。
だから、まさか君が来るなんて想像もつかなくて。
その時は凄く焦ったのを、良く覚えている。
「えっと…どうしたの?」
外に出て、課題を持っている君に訊く。
「ここ、教えてくれ」
ページを開いて、指をさし、私の方へ見せる。
「(あ、私まだ ここやってないや)」
「ごめん、私そこまだ やってないんだ。
だから一緒に解かない?」
「マジか、すまん。一緒にやらせてくれ!」
黒い髪がさらさらとなびく。
君はニカッと笑った。
夏の太陽よりも、明るくて、眩しかった。まるで、夏の暑さも忘れてしまいそう。
それくらい、素敵な笑顔だったのだ。
・
家の中に入り、私の部屋へ行く。
友達でもない彼を、家に入れるのは正直、抵抗があった。
「あら、お友達かい?」
縁側でお茶を飲んでいたおばあちゃんが、私たちに気がついたようで。
「あ、お邪魔してます」
「そうかいそうかい、ゆっくりして行ってね」
台所の棚にお菓子があるから、食べてってね、とおばあちゃんは付け足した。
2階への階段を歩く。
「…ねえ、何で私の家に来たの?」
「え、嫌だった?」
しゅんとした様子で君は言う。
あ、意味が伝わってないや。
「違う違う。えっとね、何で私に教えられに来たの、ってこと」
「あ、なるほど」
何とか誤解を解いて、私は安心した。
「んー、水谷って頭いいだろ?高校も最難関のH校行くんだし」
そういう事だよ、と君は言い、私達は私の部屋の前へ来た。
そしてドアを開ける。
「なるほど……?」
というか、初めて家族以外の人を部屋に入れたかも。
少しぴりぴりとした空気が広がり、何だか緊張してきた。
「それじゃ、勉強しよ」
「うん」
そうして私と君は、勉強を始めた。
すると、10分も経たないうちに君は言った。
「なぁ、俺の名前知ってる?」
「え、波坂 海翔 じゃないの」
「お、せーかい。水谷は 水谷 A だろ」
うん、そうだよ、と言うと君は やっぱり と元気に言った。
なんだか微笑ましい。
「…好きな人は?」
「え,いないけど…」
突然、恥ずかしい質問を君は投げかけてきた。
「波坂くんは?」
「秘密」
「何それ 笑」
……秘密、と言った君の顔は、
私を好きにさせる材料には充分だった。
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ちあき。@暇人(プロフ) - 朱まぐさん» コメントありがとうございます!本当にすみません、見てくださる方もいるのに…。そう言っていただけて嬉しいです!ですが読者様に作品を見てもらっている身ですので、毎日投稿を心がけます!わざわざありがとうございます🌟 (2022年3月19日 13時) (レス) id: b338b8448c (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - こんにちは、コメント失礼します。久々の更新でテンション上がりました✨途中少しショッキングな展開でしたが少し希望が見えてきた感じで安心しました。亀さん投稿すぎても作者様が更新したいタイミングで更新すればいいと思いますよ!偉そうにすみません (2022年3月19日 13時) (レス) @page35 id: 70ac09f88c (このIDを非表示/違反報告)
ちあき。(プロフ) - あたおかほっとけーきさん» ありがとうございます…!✨ 下手ながらに頑張って書かせていただいているので、そう言っていただけて、凄く嬉しいです( *´꒳`* ) 更新頑張りますね‼ (2022年2月22日 17時) (レス) id: b338b8448c (このIDを非表示/違反報告)
あたおかほっとけーき(プロフ) - 心理描写とか、とても丁寧で驚きました!面白かったです!! (2022年2月22日 16時) (レス) id: abef7d894e (このIDを非表示/違反報告)
千秋@海兎(プロフ) - 甘柳天音@さぶさん» 素敵な作品だなんて…!頑張って悲しくさせるようにしているので、そう言っていただけて嬉しいです( *´꒳`* )応援ありがとうございます✨モチベーション上がりました(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑ (2022年2月11日 19時) (レス) id: b338b8448c (このIDを非表示/違反報告)
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