5年前の今日、私は君に恋をした【オリジナル】

＊32話＊ ページ32

・

車に揺られながら、窓の外を見つめる。

なんだか、瞼が重たくなってきたな……


「……」


私は抵抗することなく、すんなりと目を瞑った。

そして……また、過去に戻る感覚がしたのは、気のせいだろうか。

・


なんで…なんでっ。
「誰ですか」って聞くの……


「海翔のこと、ずっと想ってたんだよ。なんでそんなこと言うの⁉」


ついカッとなって、君に言葉をぶつける。
言葉からして……君は私のこと、覚えてないの?


「す、すみません……」


海翔は少し驚いて、「そんなこと言われても」と言っているように思えた。


「…ごめん。感情的になった。

その……私のこと、覚えてないっていうこと?」


感情的になった自分を叱り、落ち着いて君に問いかける。




「覚えて……ません」




その瞬間、ポツリと涙が溢れた。


私のこと覚えてないのは…事故のせい?

君のこと想ってたのは、私だけ?


そんなの、おかしいよ。



「ごめんね…私が間違ってたみたい。

もう、私のこと、忘れてくれないかな。

自分勝手でごめん。


それじゃあ、また」



ズバズバと言葉が出ていく。

私、すごくかっこ悪いや。自分でも思わず笑っちゃう。


……でも、一度やったことは取り戻せない。

一生自分の心に残るんだ。


私は後悔をしながらも、ドアに向かっていく。


「またね」


私はポツリと言い残し、部屋を出る。


扉を閉める時、隙間から君の顔が見えた。
あぁ、もう終わりだ。


「待って、ください」


…そう君が言った言葉は、私の耳には届いていなくて。

無情にも、ドアの閉まる音が響いた。

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