七十六の巻 わっちと通い妻(土蜘蛛ver.)�� ページ39
美しい三日月が濃紺の空に輝く夜。
何をするわけでもなく、ただ無言で月を眺めていた。
「…今朝の仕事はいかがでありんした？」
土蜘蛛「今回も被害を最小限に食い止める事は出来た。…だがおぬしと過ごす時間が減ってしまったのは痛い所だな…」
「ではこの時間を有効に使わなければなりんせんな？どれ、何か一つ要求してみなんし？…ぬしの為なら何でもしてあげんすよ…？」
妖しくAが微笑めば、土蜘蛛は一瞬だけ目を見開くが、すぐに冷静さを取り戻した顔で笑った。
土蜘蛛「おぬし、吾輩を試しておるな？残念ながら吾輩は己の欲に任せて愚行には走らぬ。」
「…あらあら、つまらないでありんすなぁ…」
土蜘蛛「何を企んでいたかは知らんが吾輩を侮るでないぞ？」
「流石元祖の大将様。ぬしのような清廉な心を持つ妖怪には効かぬようじゃ」
土蜘蛛「は、面白い冗談だ。妖怪に清廉という言葉はあまり合わぬと思うがな…？」
「そんな事はありんせん。…人間だった頃からわっちは邪な目を持つ人間と、そうでない人間を見分けるのが得意でありんした。……ぬしは間違いなく、後者の者の目を持っている」
土蜘蛛「そうなのか？自分でもよく分からぬのだがな……」
「ふふ、それが普通でありんすよ。…しかしな、わっちはぬしのそんな目を見るのが、少し苦手でありんす。」
…きっとその目に映る自分は、ひどく穢れて映っていることは、目に見えて分かっているから。
土蜘蛛「……吾輩は、おぬしを穢れていると思った事は一度もないぞ？」
思ってもみなかった言葉が聞こえ、驚いて土蜘蛛の方を見た。
土蜘蛛「吾輩はな、この世で最も醜い者は心を穢した者だと思うのだ。今までそのような人間や妖怪をごまんと見てきたが、どれも目も当てられぬものだった」
「………」
土蜘蛛「おぬしが何故そこまで自らを過小評価するのかは知らぬが、吾輩の心は清廉だと言うのなら、吾輩もおぬしは充分清廉であると胸を張って主張出来るぞ？」
「…それこそ冗談でありんしょう？」
土蜘蛛「吾輩は気の利いた言葉は言えぬ性分だ。だからおぬしが己を卑下する度に言ってやろう……A、おぬしは誰よりも、綺麗であるぞ」
「…はあ、よくもまあそんな言葉を恥ずかしげもなく……」
土蜘蛛「ふん、伊達に数千年長く生きた訳ではないぞ？」
着物の裾で顔を隠したAの顔が耳まで赤くしていた事を知るのは、夜空に浮かぶ三日月だけ……
七十七の巻 わっちと通い妻(オロチver.)→←七十五の巻 わっちと通い妻(土蜘蛛ver.)
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吹雪@元百鬼蘭.° - おおっ!後編ですか…!!楽しみに待ってます!(^^* (2015年10月28日 0時) (
レス) id: 4ea06a141b (このIDを非表示/違反報告)
ドS王子LOVE - 夢主かっこいいです！オロチとか超かわいい！更新頑張ってくださいね！ (2015年10月11日 12時) (レス) id: 52660d2b3d (このIDを非表示/違反報告)
加州 - 最新頑張ってください...楽しみにしてます(にっこり (2015年10月9日 23時) (レス) id: 000de04641 (このIDを非表示/違反報告)
百鬼蘭.° - おぉ！一人称がここの夢主さんと同じだ！！嬉しいぞ！(^^* (2015年10月6日 22時) (レス) id: 4ea06a141b (このIDを非表示/違反報告)
くぅさん - 犬神は...犬神はは一体黒狐のなんなんだｧｧ！！更新楽しみに待っています！ (2015年10月4日 2時) (レス) id: 09a2c937ed (このIDを非表示/違反報告)
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